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2007年9月10日 (月)

アイドル愚考録(2)

  『マチ組』『ヤマ組』という言葉がある。
 
 これはカメラマンが撮影場所を考えるときにまっさきに脳裏に浮かぶことで、ようするに被写体となるモデルたちを大雑把に二つに分ける分類法のことだ。

 モデルには都市や雑踏など人工的にデザインされた空間で映えるタイプと、山や海、緑溢れる森や草原などのナチュラルな世界で輝くタイプの二つがある。その境界線は曖昧で、カメラマンの趣味や芸術信条などで変わってくるが、この区分は絶対である。必ずどちらかに振り分けられる。
 
 そのどちらも満たすタイプは存在しない。もし存在するならば、それはただ両方のグループからはじき出された落伍者に過ぎない。
 
 そして、9月6日号の週刊ヤングジャンプの表紙と巻頭グラビアを飾った沢尻エリカこそが、現段階における『マチ組』のトップだ。

 彼女は都会でこそ輝く。夏の強い陽射しは、彼女の肌を焼く、無粋な侵略者である。彼女の太陽はスタジオのライトで、夜の星は高層ビルから漏れる照明だ。自然物は彼女にそぐわない。

 ヤングジャンプのグラビアはそういう意味でかなりよかった。彼女の持つノーブルな雰囲気とホテルや街の背景がよく融和していて、飽かずに眺められた。
 
 中でも特筆すべきは庭園でのカットだ。画面右に岩場を配し、左には青い空で開放感を出し、中央の緑色の芝生のうえでは、踊るように彼女がターンを決めている。ボリュームのあるスカートは風をはらんでふわりと舞い、流れた髪が柔らかなウェーブを描く。まるでよくできた西洋絵画を見るようだった。

 この『庭園』というのが憎らしい演出だ。緑溢れる景観でありながら、実はもっとも自然と離れているのがこの庭園という存在だからだ。

 庭園に存在を許されるのは個人の好みにより選別された木々や花だけである。人によって計算され、演出された大自然。切り取り、刈り込み、時には殺し、美意識という名前の傲慢さで自然を歪めてできたのがこの『庭園』である。

 その、人のエゴの集合体ともいえる庭園で、まるでフェアリーのように無邪気に踊れるのは、沢尻エリカを措いて他にはない。そう断言できる。

 また、青年誌には欠かせない、水着のカットを入れなかった英断も褒めるべきだ。水着は身体のシルエットが美しいか、もしくはメリハリの効いたスタイルの持ち主でないと面白くないが、彼女はそのどちらにも属していない。

 彼女の良さはすべて彼女の抜きん出た存在感を核としている。その圧倒的な存在感は空間を歪め、彼女の存在する世界をいとも容易く非日常の異世界へと変えてしまう。

 そんな虚飾の世界で暮らす彼女には、露出の少ない衣装よりもゴテゴテと飾りつけたカラフルな衣装こそが相応しいのだ。

 老舗の熟練したケーキ職人が作る、クラシカルなケーキではなく、パリの若き俊英たちが競って作り上げた、最新鋭のデザインで作られたスィーツ。時として『食べ手』という大前提すら忘れ去り、プライドと冒険心が生み出した斬新で奇抜なオブジェ。

 それが彼女だ。

 目の廻るような、様々な色に抱かれているとき、彼女の輝きは美しさを増す。彼女は、初期のキリコ作品のような、抽象と理知の間で浮かんでいるべき非日常の存在なのだ。

 それゆえに巻頭グラビアの後半部と、真ん中辺りのグラビアは蛇足だったというほかはない。バスタブに張られた泡のお風呂に浸かっている彼女。そして普段のプライベートな姿を模倣したオフショット。

 これらのカットは彼女という女神から、その虚飾を剥ぎ取ってしまった。

 完成していたストーリー(幻想)に明らかな異物(現実)が入り込んでいる。

 ジャッキーチェンのNGシーンは彼の映画だからいいのであって、ファンタジー映画のエンドロールで同じ事をやってはいけない。積み上げてきた幻想が崩壊してしまう。もう少し配慮が欲しかった。

 確かにメリハリは大事だろうが、写真集とちがって、雑誌のグラビアはページ数が少ない。映画で言えば短編映画。小説ならばショートショートだ。僅かなページのなかで、何の前置きも理由もなく、登場人物たちが勝手にキャラクターを変更しては読者は混乱するばかりである。

 彼女たちの魅力のさまざまな側面を提示したいという熱意は分かるが、そのために彼女らの魅力を削ぐようなことがあっては断じてならないのだ。

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