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2007年9月10日 (月)

アイドル愚考録(3)

グラビアも見続ければ珍しいものが発見できる。

ヤングサンデー、8月30日号のグラビアは木口亜矢。

水着でのカットが大半を占める、青年誌のグラビアとして無難な構成ながら、目を引いたのはその水着がオレンジ色だったことだ。

オレンジというカラーは肌の色と相性がよくない。

各社共にオレンジ色の水着に凝ったデザインが多いのは、おそらくそのためであろう。

彼女はその高難度の、しかもシンプルな作りのオレンジ色の水着を見事に着こなしていた。

成功の一因は撮影場所にある。南の島というロケーションが彼女に合っていた。

照りつける太陽の陽射しが彼女の身体を輝かせ、オレンジ色をより際立たせていた。

また小道具としての極彩色の様々なフルーツや椰子の実が効果的に働いていた。

特にそれらの上に寝そべったカットは秀逸の一言に尽きる。彼女の柔らかな身体を視覚的に見せるよいアイディアだった。

その一枚の中で、もっとも柔軟に変形していたのが彼女の乳房や腕であったからだ。

硬度の違う様々な小道具を散りばめ、比較対象を作ったことで彼女の優れた肉体性が浮き彫りになっていた。

そう。彼女の魅力はその肉体性にあるのだ。ロケ地選びの成功はあくまで一因に過ぎない。

彼女は肉感的なのに媚びがない。実におおらかで健康的だ。

奔放な肉体を強く意識させるが、それでいて猥らな雰囲気はまるでない。天然の明るさがある。

こんな肉体性を持つグラビアアイドルは珍しい。

少なくとも現実の世界では私は知らない。

芸術や文芸であれば多少は思いつくが、これもあくまで重なる部分があるという程度だ。

例えば画家ゴーガンがタヒチに求めた楽園のイメージだ。

南国の島に住む、奔放な身体を持った褐色の乙女たち。

また、文豪、坂口安吾の「白痴」「青鬼の褌を洗う女」に現われる、自らの肉体だけを拠りどころにする女たち。

それらが辛うじて彼女の一部を表現していると言える。

共通項は現在という一瞬だけを生きる女たちの姿だ。

彼女らの身体は過去も未来もなく、ただその瞬間だけを全力で生きている。予断も計算もそこにはない。

ただ己の肉体だけがそこにある。

8月30日号のヤングサンデーは、木口亜矢という稀有な肉体性の持ち主を我々に教えてくれた。

そして、それだけに『あやジャイロ』はないだろう、と嘆息せざるをえない。

巻頭グラビアの最後の写真。

彼女はそこで、横座りの姿勢で右足首を右手で掴み、背中越しに耳の辺りまで引っぱり上げた格好で、ファインダーに向かって微笑んでいた。

編集部ではそれを『あやジャイロ』と名付けていた。

恐らく少し前に日本でも流行したハリウッドヨーガ、ホットヨガの類いから見付けてきたポーズなのだろう。

ハタヨーガではないと思うのだが、門外漢の私には正しい判断がつかない。

とにかくそれは、柔軟性に秀でた彼女にもかなりの無理を強くポーズらしく、微笑を湛えているはずの彼女の顔が強張っているのがよく分かる。

そこには先程までの肉体の純粋さがない。

体勢保持に意識が向かったため、笑顔が硬質化してまるでプラスチックの面を付けているようだ。

島の娘の自然な笑みではなく、カメラマンに笑顔を要求されたグラビアアイドルに戻ってしまっている。

これが『亜矢ジャイロ』ではなく、シャヴァ・アーサナのポーズであればよかったのに、と痛切に思う。

シャヴァとは屍(しかばね)、死体が硬直しきる前の状態をさす。

完全に脱力し、まるで死体のように床に身体を横たえるこの体位であれば、肉体という生の時間から、死という永遠への時間への推移を象徴できた。

彼女のグラビアの掉尾を飾るに相応しかったのではないか。

彼女の肉体は健康的な食慾を呼び覚ます。爽やかな肉慾を感じさせる。

もしかするとこの先、彼女自身がその肉体に溺れ、透明で清澄なセックスアピールを持て余すことがでてくるかもしれない。

まだ若い彼女が制御するには、難しい程のエネルギーを秘めているからだ。

しかし乗りこなすことができたならば、彼女は化けるに違いない。そして、その可能性は大いに有る。

彼女の特技は乗馬(5級)である。

じゃじゃ馬を馴らすのはお手の物だろう。

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