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2007年9月24日 (月)

ある疑惑( アイドル愚考録 )

時代小説に登場する、類型的ではあるが魅力的な人物として、一見弱そうだが実は剣の達人、というものがある。

流れる雲のごとく飄々とし、その姿からは微塵も強さを感じとれない。隙だらけに見える。

しかし、いざ斬りかかってみるとかすり傷ひとつ与えられない。まるで剣の方が相手を避けているようで、傍からは遊んでいるようにしか見えない。やがては斬りかかった方が根負けし、目を回してどうと地面に倒れてしまう。

無論、フィクションであり、そのような達人がいたかどうかは分からない。各道場、流派に伝わる開祖や名人たちの心躍る逸話も荒唐無稽なものが多い。しかし、真剣を持っての果し合いが実際に行われていた時代の話である。全てを虚構と断じてしまうのも些か乱暴ではないか。

9月20日号のヤングサンデーの巻頭グラビアを飾ったのは、映画「スイングガールズ」でトロンボーン奏者を演じた、絶対音感を持つグラビアアイドル、辰巳奈都子であった。

どのカットもレベルが高く、特に表紙のバストショットは秀逸だった。

彼女の愛嬌のある柔らかな身体を前面に打ち出しつつも、耳の辺りから前に垂らした髪が、ぽちゃっとした頬を覆い隠してやや鋭角なラインを演出し、本来の緩やかなカーブとやや鋭角なカーブの二種類の曲線が楽しめる画面構成だ。

それにしても今回のグラビアの構成は見事だった。最初から最後のカットまでよく練られた構成で、ひとつの映像作品が出来上がっていた。まずは編集部の構成技術に拍手を贈りたい。

ここで気に留めておくべきは、ストーリー性があったからといって、それが被写体である辰巳那津子の力量を示すものである、と単純に結びつけるわけにはいかないということだ。

私は、今回の功績は、彼女の魅力を知り尽くしたカメラマンと、編集部のページ構成によるものだと考えている。

辰巳奈都子の魅力とは一言で現すならば「隙」である。

彼女の体には嘘がない。

一点の曇りもない、夏の青空だ。剥きだしであけすけなその態度からは、相手に完全に心を許しているような、弛みが感じられる。

街での買い物や食事のカットが水着でのカットよりも、より生き生きとしているのは、間違いなく彼女から撮影時の緊張感が見られないからだ。

つまり今週号のグラビアに物語性を生まれたのは、演者としての彼女の技術が高かったわけではなく、彼女の弛み、隙を利用して日常的なシーンを合成させてみせた、カメラマンの強かさにあるのである。

辰巳奈都子はただ自然に振る舞っていただけに過ぎないのだ。

しかし、私には拭いきれない、ひとつの疑念がある。

もしもそれらが演技だとしたら?

すべてが彼女の計算通りだとしたら?

名刀とは鞘に納まっているものだとも言い、居合いの教授では抜刀と同じ重きをおいて納刀の技を教えるとも聞く。

彼女こそが鞘に納まった名刀だとしたら。

実は今回のブログを書く際にプロフィールを調べていて、ひとつ気になる箇所があった。

彼女は好きなアーティストに、マリリン・マンソンをあげていたのだ。

全米で数々の奇行と伝説を残し、熱狂的なファンとそれに倍する敵を作ってきた彼のファンである彼女が、果たしてグラビア通りの人間なのかどうか。

今頃、してやったりとほくそ笑んでいるのではないか。

そんな訳で、私はまだ今回の自分の判断を信じきれてはいない。

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