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2007年10月27日 (土)

実録・白い悪魔2

@1939年、冬戦争(ソビエトとフィンランド間の戦争)真っ最中のフィンランド領内。
コラー河を臨む森の中。
フィンランド領内に侵攻したソビエト軍の歩兵師団が待機している。
その数4000人。
ソ連軍師団長「何も『白い悪魔』が相手とはいえ、歩兵一個師団も必要は無かろう」
ソ連軍政治委員「同志将軍スターリンは『白い悪魔』の噂を聞きつけ、大変憂慮されている」
ソ連軍政治委員「念には念を入れよ、だ。同志師団長」
(政治委員…ソビエト共産党直属の軍付き政治指導者。督戦官のようなもの)

@コラー河近く、フィンランド軍の陣地
丘に作られ、巧みに偽装された陣地。
フィンランド軍の中隊の士官が集まっている。
少尉A「…報告では、イワン(ソビエト人の僭称)の歩兵一個師団がこちらに向かっているそうです」
少尉B「も、もう駄目だ!中尉、陣地を放棄して撤退しましょう!」
中尉「馬鹿モンが!逃げるったって、何処に逃げる。逃げ場所なんて無い」
少尉B「では、皆ここで死ねと言うんですか!」
少尉A「そうだ!祖国を守るために、死ぬまでに一人でも多くイワンをブチ殺すんだ!」
紛糾する士官達。
片隅で愛銃モシン・ナガン狙撃銃の手入れをしていたシモ・ヘイヘが一言。
ヘイヘ「…一人頭125人倒せば、それで済む」
静まり返る士官達。

@コラー河を臨む森の中
ソ連軍師団長「攻撃開始!」
合図を受けて、いっせいに突撃するソビエト軍の歩兵。
ソ連軍政治委員「行け!赤軍狙撃兵の勇気と豪胆の見本を示せ!」
ソ連軍政治委員「立ち止まる奴、逃げる奴はその場で射殺する!覚悟しておけ!」
ソ連軍政治委員「(…これで『白い悪魔』は終わりだ。この手柄で俺は出世間違いナシだ!)」
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戦闘開始から1時間後。
銃声と爆音が森の奥から絶え間なく続いている。
ソ連軍政治委員「…まだ終わらんのか」
ソ連軍師団長「そのようですな」
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戦闘開始から2時間後。
銃声と爆音が森の奥から絶え間なく続いている。
ソ連軍政治委員「…誰も戻って来んな」
ソ連軍師団長「戻ってきたら貴方に撃ち殺されますからな」
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戦闘開始から3時間後。
銃声と爆音が止んだ。
ソ連軍師団長「終わったようですな」
ソ連軍政治委員「全く、時間が掛かりすぎる。この師団は一体どうなっておる」
師団長、政治委員を一睨みするが、すぐに森に視線を戻す。
ソ連軍師団長「…戻ってきましたな」
一人のソ連軍歩兵が森から出てきた。
ソ連軍歩兵「…報告します」
ソ連軍政治委員「どうした。『白い悪魔』は殺ったのか」
ソ連軍歩兵「我が歩兵師団は…全滅…す…」
バタリと前のめりに倒れる歩兵。
ソ連軍政治委員「ひっ!」
助けを求めるように師団長に振り返るが、その時一発の銃声が。
政治委員の目の前で師団長の頭が吹き飛び、残った遺体はゆっくりと後ろに倒れる。
ソ連軍政治委員「ばっばっ馬鹿なあぁ!」
叫んだ彼も、一発の銃弾を後頭部に浴び、脳漿を撒き散らしながらフィンランドの大地に倒れる。

@フィンランド軍陣地
煙の上がるモシン・ナガン狙撃銃から顔を上げるヘイヘ。
彼らフィンランド軍の陣地の前には雪の台地が見えないほどソ連軍歩兵の死体が遺棄されている。
兵士A「やった!勝ったぞ、ブラヴォー!」
いっせいに歓声を上げる満身創痍のフィンランド軍。
歓喜の渦の中で、ヘイヘは一人銃の手入れを始める。
兵士B「やったぞ、おい、やったぞ!…あ、中尉殿!」
頭に包帯を巻いた中尉がやってくる。
中尉「やったなヘイヘ。見事な腕前だった」
ヘイヘはちょっと微笑んで答える。
ヘイヘ「いえ、腕前は問題ではありません」
ヘイヘ「足場の悪い所を密集して突撃してくれば、当然の結果です」
ヘイヘ「敵はあちらからどんどんやって来る、こちらは狙いたい放題。カモ猟より簡単です」
戦前はカモ猟で生計を立てていたヘイヘ。
詰る所、ソ連軍歩兵はカモより弱かったわけである。ヘイヘの前では。
(本当はそれなりに強いんだけど…相手と場所が悪かったネェ)

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