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2008年3月17日 (月)

ふたりの客人 ( アイドル愚考録 )

先週号のヤングサンデーの表紙を飾ったのは、中国出身のグラビアアイドル、ローラ・チャンであった。

北京五輪を反映してか、さまざまなスポーツのコスチュームに身を包んだ、所謂コスプレ写真がメインだったが、それらよりも表紙の青いチャイナドレス姿がいちばん愛らしく、彼女に似合っていた。

ただ、通常のワンピース型ではなく、上下別の、腹部が大きく露出した改造チャイナドレスだったのが、私個人としては大きな減点だ。

チャイナドレスは女性の柔らかなラインを愛でるべきもの、というのが私の持論だからだ。今回のように、そのライン上に目を惹く部分( 腹部の露出 )があると、そこで視線が停滞してしまい、視線のスムーズな上下運動を阻害してしまう。個を主張することで、全体としての統一を欠いてしまっているのだ。

それでも、先週に私が見たグラビアの中では、彼女が最も目を惹いたことは間違いない。

彼女の魅力は小動物、愛玩動物のような可愛らしさである。大きな目はアイアイやヤマネのようだし、少し前に飛び出し気味の上前歯も、ビーバーのようなげっ歯類を思わせて愛らしい。

こちらを脅かす危険性はまるでなく、保護欲だけを大いに駆り立てる。

これはアイドルに必要な特性である。

ローラ・チャンは、日本のオールドタイプなアイドルの才能を持っていると言ってよいだろう。

では、リア・ディゾンの場合はどうだろう。

彼女もまた、ローラと同じく外国からの客人であるが、その扱いはまるで違っている。

デビュー当時、彼女は『 黒船 』と銘打たれ、日本のグラビアにセンセーションを巻き起こした。

やや求心力を失いつつあった日本グラビア界は、その日本的でない大陸的な美の顕現に目を瞠った。

最初からマスコミの扱いも大きく、世間もそれに同調するかのように彼女を祭り上げ、あっと言う間に彼女はグラビア界のトップスターに登りつめた。

しかし私には、彼女が実力で昇ったのではなく、周囲の人間がその背中を押して、無理やりに頂上へ上らせているようにしか映らなかった。

トップへと休みなく走らされる彼女の姿は、どこか追放される罪人のようでもあった。

ところで、東南アジアを中心として、広くアジア地域一帯に根づいている民間信仰のひとつに「客人(まれびと)信仰というのがある。

すなわち遠くから訪れる旅人を神の使者もしくは神そのものと崇める考え方である。神の使者または神そのものとしてみなされた旅人は、手厚いもてなしを受ける。

( そのポスターが卑猥とされて撤去されたことで一躍有名となった蘇民祭。そこで祭られている蘇民将来のエピソードも、客人信仰の現れである )

つまり、日本は古来より遠方からの客人を厚く持て成す習慣があったわけだが、ここで忘れられやすいのが、それがあくまで客人であるという事実だ。その後、村に入り、一生を終えたというエピソードはあまり聞いたことがない。

村や地域に新しい風を吹き込んだ旅人は、恩人として歓待されるが、結局はその優れた力ゆえに恐れられて遠ざけられる運命なのである。

ある者を鬼と呼んで恐れるのも、神と呼んで畏れるのも、実は同じ行為でしかない。根底にあるのは、畏怖すべき存在を自分から遠ざけようとする恐怖だ。

リア・ディゾンは確かに停滞気味だった日本グラビア界に新鮮な空気を送り込んだが、おそらく今後、日本に根付くことはないだろう。他を圧倒する、その優れたルックスゆえに彼女は恐れられ、そして滅びるのである。

その点、ローラ・チャンには愛嬌がある。上述のようにわれわれは彼女にプレッシャーを感じることはないのである。

同じ神、もしくは神の使いであっても、リア・ディゾンがキリスト教的な神とするならば、ローラ・チャンはどこか人間くささのあるギリシャの神々( 好色なゼウスや呑んだくれのバッカス )に近いと言える。

スーパーマンが大衆的人気を勝ち得たのも、ヒーローとしての力ゆえではなく、冴えない新聞記者としてのもうひとりの彼がいたからである。人は、完璧なヒーローを隣人として持ちたいとは決して思わないのである。

瞬間の最大風速においては、ローラ・チャンはリア・ディゾンには敵うまい。しかし、日本の芸能界で根付く可能性は、彼女のほうが勝っていると言える。

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