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2008年4月 7日 (月)

居着き ( アイドル愚考録 )

蒼井優のことを考えると、恥かしさのあまり穴の中に逃げ込みたくなる。

私は彼女のデビュー当時、とても低い評価を与えていたからだ。

その頃から何かしら滲み出る、オーラのようなものは感じていたのだが、私はあまり深入りすることを避け、もっと自分の好みのタイプで、もっと分かりやすく且つ論題としては扱いやすい、外形的な美しさが際立つアイドルたちを論じてきた。学徒としてあるまじき行為であり、深く恥じ入るばかりである。

今ならば語ることができる、という程の準備は整ってはいないのだが、自分の中での彼女の位置づけが無視できないほど高まっている以上、避けて通ることもできないだろう。

今後、思考活動を進めていく中で、ひとつの足がかりとして利用できるよう、ある程度の形をここで整えておきたい。そう考えている。

さて、当初、私が彼女を自身の思考活動の中から遠ざけていた理由のひとつは、その肉体的魅力の欠乏にあった。特に胸が大きいわけでもなく、さりとてボディラインが美しいというわけでもない。顔つきも整ってはいるが、まあ地味な部類であろう。

外形的な面から言えば、他のアイドルたちに比べて特に秀でたパーツは持っていないのだ。

だが、今の私は彼女がいい身体をしていると断言できる。

いい身体と言うことで、別に私は彼女がセクシャルな身体付きをしている、と言っているのでないことをここで明言しておく。私の言う、いい身体というのは、『 居着きのない身体 』を指している。

『 居着き 』という言葉をご存知ない方のために、少し説明させて頂く。

『 居着き 』とは格闘家、特に日本武道に携わる人間がよく口にする言葉で、その意味はメンタルな要素から身体が強張り、状況の変化にすばやく応じることができない状態を指す。

例えば、道を歩いていると、突然、正面から乗用車が猛スピードで向かってくるとしよう。さて、貴方はどう対応するか? 右へ飛んで避けるか、左へ身を転じるか。それとも気が動転してその場に立ち尽くしてしまうか。

存外、多くの人が三つ目の選択を選んでしまうものである。迫りくる脅威を感じていながら、否、理解しているからこそ、恐怖に身は竦みあがり、動くこと叶わず、まるで木偶のようにそこに佇立するばかりである。

この状態が『 居着き 』である。

また、『 居着き 』は防御のみならず、攻撃にも悪い影響を及ぼす。

攻撃しろ、という脳からの命令にも遅れてしまうためだ。気配や予備動作を消すために工夫を凝らす暇がなく、結果として何の細工もない動作で攻撃をしかけてしまう。所謂、テレフォンパンチという奴で、当然、手強い相手からは強烈なカウンターを喰らうはめになる。

しかし、居着いていなければ、つまり心が揺れることなく、日常とおなじ反応速度で身体を動かすことが出来るのならば、その反応は相手の予想を裏切り、圧倒的に優位に立つことができるのだ。

そのため武を志す者たちは、この境地をめざして日夜稽古に明け暮れ、苦心を重ねているのである。

蒼井優は、武道に生きる人間であれば誰もが得たいと願う、この居着きのない身体を天然自然に備えているのである。

そのため、彼女の表情や立ち居振る舞いは我々の予想を上回り、まるで合気道や柔道の達人に軽々と投げ飛ばされているかのように、たやすく心を掌握され、右へ左へ振り回されてしまうのである。

あの一見、地味で凹凸の乏しい身体が恐るべき資質を蔵していたのだ。

情けないことだが、このことに気付くのにかなりの時間を要してしまった。

ここで思い起こされるのが、「空気投げ」の妙技で柔道史に燦然と輝く、故・三船久蔵十段の言葉である。

「非凡は凡の中にある」

まさに蒼井優は、この言葉の具象化といっても過言ではあるまい。

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