井上真央のアオザイ ( アイドル愚考録 )
皆さんは今週号の少年マガジンをもう御覧になっただろうか。
今週の少年マガジンの巻頭グラビアは、「花より男子」劇場版の封切りを間近に迫えた、今もっとも旬なアイドルの井上真央である。
ここ最近はあまり質のよいグラビアに出会えず、寂しさと苛立ちに苛まれていた私だが、その表紙を目にした途端一気にテンションが跳ね上がった。体中の汗腺が興奮で開き、気付けばクーラーのよく効いた書店の中、ひとりだけ大量の汗をかいていた。
急いでページをめくると、私の興奮度は一気に加速し臨界点を超えた。それは血管に直接テキーラを注射されたかのような、異常なハイテンションであった。
彼女はアオザイを着ていたのである。
アオザイは私がこの世でもっとも愛する衣装である。
チャイナドレスを基調とし、フランス流のエレガントさで磨き上げられたこの衣装ほど、女性の持つ美しさを高めてくれるものがあるだろうか。女性のボディラインを忠実になぞることで、生地の下の起伏をあけすけに暴き立ててしまうが、決して淫靡な雰囲気はない。聖と俗を同時に備えながら決して矛盾しない、奇跡のような装束なのである。
しかも、今回、それを着ているのは井上真央だ。
これで昂ぶらないはずがない。
そしてそれはカメラマンたちも同じだったようだ。
やたらと構図に凝った、熱の入った労作が多かったのだ。主体であるはずの彼女をあえて画面の端に配置し、ぽっかり空いた空間にベトナムの風景や人々の生活を取り込むという、アイドルのグラビアという枠に収まらない、芸術作品のような仕上がりのグラビアばかりだった。
おそらくは彼女の持つ魅力に生に接し、アーティストとしての欲に火がついたのだ。十年に一人の逸材を手に入れ、自分の写真家としてのキャリアを試してみたいという熱情を抑え切れなかったのだろう。
それも無理のないところである。井上真央にはそれだけの魅力がある。
私が思うに、彼女の最大の魅力はその未完成さだ。
彼女は未だ成長の過程にある、ほころびかけた蕾である。
成長した彼女がどんな花を見せてくれるのか、まだ誰にも分からない。
艶やかでゴージャスな薔薇か。それとも清楚な白百合か。はたまた青空に輝く太陽のような向日葵か。
そこには想像力を働かせる余地がたっぷり残っている。
勝手な想像を膨らませながら、彼らスタッフが自分の推理を証し立てる手がかりを求め、ファインダーの前でポーズを決める彼女に食い入るような視線を向けている光景が眼に浮かぶ。
そしてきっと、そんな彼らの熱い眼差しを嘲笑うかのように彼女はころころと表情を変えてしまうのだ。まるで無限に形を変える万華鏡のように。
それはなんと幸福な撮影現場だろうか。
それだけに私は声を大にして言いたい。
これだけの素材を手にしながら、なぜ表紙がピンボケしてしまったのかと。
表紙こそ最初に人が目にするものである。看板である。細心の注意でもってあたるのが当然ではないか。
惜しい。まことに惜しい。
これでは表紙を見て落胆し、中に収められた至高のグラビアに気付かない人間もいただろう。彼はたった一枚ページをめくらなかっただけで、井上真央のアオザイ姿を拝むことなく人生を終えてしまうのだ。これは悲劇である。
マガジン編集部は猛省し、二度とこのような惨事を引き起こさぬよう、これからは細心の注意でもって編集作業に従事していただきたいものだ。
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