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2008年8月

2008年8月26日 (火)

米がない

○ 道

   雨が降っている。

麻実のN「雨の日にやりたくないこと第一位

 は、米を買いに行くことだ」

   麻美(26)がヨタヨタと歩いてくる。

麻美「ったく、嫌んなっちゃう」

   ラフな服装で片手に傘、もう一方には米

   (5キロ入り)の入った袋を提げている。

   前方から同じ様に米を持った同年代の女

   が歩いてくる。

   女は傘を持っておらず、急いで帰りたい

   のだが、米が重くて急げない。

   二人、目が合い、思わず足を止める。

   しばし、動きを止める。

声「おい」

   不意に女の頭上に傘が差し出される。

麻美「!」

女「!」

   傘を差し出したのは二人と同年代の男。

男「だから傘持ってけっていっただろ」

   女、満面の笑みで男の腕に手を回し、

女「いこっ」

   女、自慢げな笑みを麻美に残し、男と共

   に遠ざかっていく。

   麻美、悔しさから地面を蹴る。

男「いいかげん放せよ、姉ちゃん」

女「いいから、じっとしてなさい」

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2008年8月25日 (月)

石原あつ美と石原ブルー ( アイドル愚考録 )

ピカソの青(プロシア青)。

北野たけしの北野ブルー。

これに石原あつ美の石原ブルーを加え、『 世界三大ブルー 』とすべきではないか。

ヤングマガジン38号の石原あつ美のグラビアには、そう思わせるだけの魅力があった。

先ずは駆け足で総評から。

最初から最後まで、石原あつ美という素材を活かしきった、素晴らしいグラビアであった。

敢えてラフに乱した、くしゃっとした髪が自由奔放で楽しい。茂みからひょっこりと顔を出した、愛らしい小動物のようだ。

彼女のチャームポイントである大きくて澄んだ瞳は、顔の表情の濃淡を意図的に薄めてみせることで「笑っている目」「怒っている目」という感情の従属物に堕ちることなく、独立した一個の芸術品となっている。

ヤングサンデーの休止にともない、ヤングマガジンによせる我々の期待は大きなものとなっている。そんな中、オール水着カットという実にヤングマガジンらしい骨太のグラビア構成は、これからも変わらずグラビアの王道を突き進むという、彼らの声明文に他ならない。

グラビア界の行く末に不安を感じていた我々の不安を打ち消す、何と力強い主張だろうか。

ひとまずは安心して良さそうである。

それでは本題である石原ブルーに移るとしよう。

石原ブルーが確認できるのは全グラビアの内わずか数枚のカットである。その数は極めて少ないが、他のカットを圧倒する比類なき光を放ち、我々の目を惹きつける強い引力を備えている。

撮影場所は浴室である。ホテルなのか、すこし狭くて息の詰まるような緊迫した雰囲気がある。

そこに、彼女が立っている。

シャワーの雨に打たれながら、こちらをじっと見ている。濡れてボリュームのなくなった髪が、頬や首筋に張り付いて凄絶なエロスを醸成している。

そして、画面全体を支配する、淡く、透き通るようなブルー。

これが石原ブルーである。

その色はペルーとボリビアに跨る古代湖、チチカカ湖の色合いに近い。風一つない、完全に凪いだ状態のチチカカ湖を思い浮かべてもらいたい。あの青は確かに石原ブルーである。

その青が、現実とも幻ともつかない空間を作り出し、石原あつ美というグラビアアイドルから名前を奪い取り、まるで正体の知れない、極言すれば生きているのか死んでいるのかすら分からない、謎の女に変えてしまっているのだ。

こう書けば、すべては撮影スタッフの演出の力によるもの、と勘違いされそうだが、それは大きな間違いであると断じておく。

あのブルーにもっとも相応しいキャンパスは、石原あつ美の肌以外にありえないからだ。

色の白さで言えば、谷桃子も愛衣もよい色を持っているが、彼女らの白は底に温もりが透けて見えてしまう。石原あつ美のクリアーな白だけが、今回の求めに応じられる唯一の色なのである。

ここで種を明かしてしまえば、この色は浴室に張られたタイルの青である。それがシャワーの水と混じりあい、溶け合い、淡いブルーとなって画面を覆っているだけだ。言葉にしてしまえば大したことのない、奇術やペテンのたぐいとも言えよう。

しかし、もっとも簡単なトリックで大衆の目を欺くこと、それが奇術の最終到達点である。

寧ろ、これだけの手札で、石原ブルーという奇跡を成し遂げてみせた、スタッフおよび石原あつ美の卓抜したその手腕を賞賛すべきではないだろうか。

今回、私は彼らの偉業を讃えると同時に、これだけのスタッフを擁するヤングマガジン編集部の能力の高さを示すことで、私同様ヤングサンデー喪失のショックに揺れた人心を癒したいと考えた。

それが僅かなりとも叶ったのならば、これに優る喜びはないのだが。

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2008年8月19日 (火)

新しい傘

○ マンションの一室・リビング

   ママが新しい子供用の雨傘に名札をつけ

   ている。

   それを待ちきれない様子で覗き込む少年。

ママ「はい」

   ママ、少年に傘を渡す。


○ マンション・廊下

ママの声「降ってないでしょ」

   少年が部屋から飛び出してくる。

少年「いーの、雨だと汚れるから」


○ 同・玄関

   傘を手に、少年が嬉しそうに駆けていく。

   すれ違った女性が傘を見て空を見上げる。

   空は晴れ渡り、日差しが眩しい。


○ 道

   嬉しそうに傘を差して歩く少年。

   すれ違う大人たちがそのかわいらしい様

   子を見て小さく笑う。

   皆が笑うので不安になってくる少年。

   歩く姿勢が段々とうつむき加減に。

少年「!」

   何かを見つけて駆け出す少年。

   日傘を差した老婦人に駆け寄る。

老婦人「?」

少年「ねぇねぇ、それもおニュー?」

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2008年8月12日 (火)

下駄

○ 電車の車内(夜)

   座席はほとんど埋まっているがさほど混

   んではおらず、浴衣を着た乗客がちらほ

   ら見受けられる。

   座席の乗客の足を横から順に映していく

   と一人だけ裸足の乗客がいる。

   浴衣姿の由衣(17)だ。涙をぐっと堪

   えている表情。足は土で汚れている。

○ 川原(一時間前)

   花火大会が行われ、たくさんの観客が訪

   れている。

   由衣の手を振り切って立ち去ろうとする

   由衣の彼氏。

由衣「バカ!」

   泣きながら自分の下駄を投げつける。

○ 再び、電車の車内

   由衣の前に差し出される小さな下駄。

由衣「!」

   顔を上げると、浴衣姿の少女(5)が自

   分の下駄を片方脱いで差し出している。

由衣「貸してくれるの?」

少女(うなずく)

   由衣、小さな下駄を受け取り履いてみる。

   下駄が小さいので踵が出てしまう。

   由衣と少女、顔を見合わせ二人して笑う。

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2008年8月 7日 (木)

千代谷美穂のガールズバイカー ( アイドル愚考録 )

千代谷美穂。

我々はその名前を覚えておく必要があるだろう。

なぜならば、彼女はガールズバイカーの第5号において、あのフランス救国の英雄、ジャンヌ・ダルクでさえ成し遂げなかった奇跡を起こしているからである。

いきなり歴史上の偉人の名前が飛び出したことに戸惑いを覚えた方は多いだろう。しかし、これは単なるハッタリなどではない。何となれば、私は両者の間にある共通点を見出しているのだから。

両者の共通点とは、共に自己主張する強い女性であるということだ。

改めて説明するまでもないが、ジャンヌ・ダルクは神の啓示を受け、さまざまな苦難に見舞われつつも、兵士たちを率いてフランスを救った、英雄の中の英雄である。女性の活躍が厳しかったあの時代に、プライドの高い男たちを統率し、一騎当千の軍団を作り上げた彼女の最大の武器は、どんな抵抗を受けながらも最後まで自らの信念を貫き通した、その鉄の意志である。

まさか、彼女が自己主張する強い女性であることを認めない人はいないだろう。

一方、千代谷美穂はどうか。

彼女は歴史上の人物などではない。過去の人ではなく、現在に生きるアイドルである。ゆえにその性格、行動の全てを知ることはできない。しかし、そんなものは必要ではないのだ。必要なのは、ガールズバイカーの第5号の表紙、そこに写し出された千代谷美穂の立ち姿だけである。

街中である。どこかは分からない。道端に一台のバイクが停まっている。赤と黒のシンプルなカラーリングの、カワサキ製のバイクである。そして、そのすぐ横に持ち主であるらしい女性、千代谷美穂が立っている。彼女はパーカーのポケットに両手をねじ込み、ややアゴを突き出すようにし、こちらを値踏みするような、また見下すような視線を飛ばしている。

不遜な態度である。こちらに媚びることなく、鑑賞者に対して同等、もしくはそれ以上の場所に立とうとする、彼女の強い意思がそこから放射されている。

ここで忘れてはいけないのが、彼女の傍らに停められているのがバイクであるということだ。これは重要な要素である。これが自動車であったならば、この表紙の価値は雪崩をうって下落する。彼女のとなりにあるのは、あくまでバイクでなければならない。

私は、バイクは自己実現のためのアイテムだと考えている。単なる移動手段とするならば、自動車の方が何かと便利であろう。雨天時の走行性。乗車人数。積載能力。安全性。これらの能力において、バイクは自動車に大きく水をあけられている。にも関わらず、バイクを選択するというのは、そこに何かの強い拘り、すなわち自己主張を感じずにはいられない。

彼らはそれらの利便性よりも、カッコよさを選んだのだ。

合理的な判断よりも、自らの信念、美学に殉ずることを選んだのだ。

そして、それが女性であるならば、その意識は男性のそれよりも強いと言わざるを得ない。

一般的に女性は我が身を守る意識が男性よりも強い。それは我が子を守り、育てるために女性に備わった本能的な衝動であるらしい。にも関わらず、彼女たちは自らのスタイルを優先させたのだ。危険を避け、安全を求めよという、人類という種からの根源的な命令を退けてまで。

彼女自身の態度。そして傍らに停められたバイク。その二点から、私は彼女を自己主張する強い女として認定し、千代谷美穂とジャンヌ・ダルクを結びつけるというアイディアの根拠としている。

これを単なる私の思いつき、妄言の類として一笑に付す者がいるだろうことは容易に想像がつく。私自身がそうだからである。しかし、それでも私は千代谷美穂の姿に、オルレアンの聖なる乙女、ジャンヌ・ダルクの姿を幻視せずにいられない。

彼女がカワサキのバイクで戦場を駆る姿が脳裏から離れない。彼女の後ろに付き従う騎士団の喊声。彼らの騎乗する軍馬の蹄が、雷鳴のような轟音を立てる。それは、幻とするにはあまりにも魅力的すぎた。

しかし、忘れてはいけないことがある。それは彼女の終焉のカタチだ。彼女が魔女として火刑に処されたことを抜きにして、彼女の伝説を語り終えることは不可能である。

彼女の死は、ある悲しい事実を示唆している。

男という生き物は、自己主張の強い女性を尊敬、崇拝する一方で、実は敬遠し遠ざけようとする強い衝動を持っているだ。彼女の悲劇的な顛末は、彼女自身の潔白で強過ぎた精神が生んだ必然的帰結であったと私は考える。

これをマシズム、男の身勝手と非難して除外することは簡単だが、グラビアを見る悦びが男の本能的で単純な欲望に根ざしている以上、グラビアを語るうえで決して外すことのできない重要な因子である。

男は自己主張の強い女を好まない。

これは恐らく今後も変わることのない事実である。すると、千代谷美穂もジャンヌ・ダルク同様、悲しい最後を遂げる運命なのであろうか。

私は確信を持って、その問いに『 否 』と答えよう。

彼女の向かう先にあるのは処刑台ではなく、栄光という二文字である。

冒頭で書いた、ジャンヌ・ダルクですら成し遂げなかった奇跡。それは、自己主張する強い女性でありながら男性の反発を招かないこと、である。

この容易ならざる難題を、千代谷美穂はあっさりと解いてしまった。それも最小の手数で。

彼女は大したことはしていない。彼女のしたことと言えば、ただ唇の両端を上へ僅かに持ち上げただけである。しかし、その僅かな表情筋の動きが彼女を火刑台から救い出したのだ。

彼女は笑っていたのである。

こちらを見下すような怖い目をしながら、すぐ下の唇では笑みを作っていたのである。

途端に世界は様相を変える。強張ったモノクロの世界に鮮やかな色彩が宿る。

それまでの強気で挑戦的な振る舞いは単なるポーズだったのだ。そしてポーズを作ると言うことは、それを見せたい相手がいるということだ。つまり彼女は強がって見せていただけなのだ。

それを根拠づけるのが彼女の笑みのカタチである。それは冷笑、嘲笑などというものではなく、隠そうとして隠し切れなかった笑みである。自分の馬鹿げた振る舞いを自覚し、思わず漏れてしまった照れ笑いなのだ。

自己完結した世界に住むジャンヌ。己の信念を失わず、大勢の仲間に囲まれながら誰も寄せ付けなかった孤高の人。その生涯は立派ではあったが、あまりに立派過ぎて近寄れない。仰ぎ見ることはできても、同じ高さで目線を合わせることはできない。

しかし千代谷美穂はこちらと目を合わせ、私たちの声を待っている。一見、拒絶するようなポーズを取っているが、実際にはこちらとのコミュニケーションを欲している。開かれている。

彼女は、夢のように美しいが我々と無限の距離を隔てた夜空の星ではなく、美しさでは遠く及ばないが、人類を暗闇の恐怖から救い出し、真冬の寒さから守ってくれる地上の火であることを選んだのだ。

そんな彼女をどうして愛さずにおれようか。

我々は胸に刻まなければならない。千代谷美穂という地上の火を。

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2008年8月 5日 (火)

のんびり

○ 住宅街の道(朝)

   ある家から子供の走り回る音が聞こえる。

少年の声「何で起こしてくんないんだよ!」

母親の声「起こしたでしょ!」

   その家からランドセルを背負った少年が

   慌てた様子で飛び出してくる。

   ふと隣家の屋根(ベランダの横)でのん

   びりと寝ている野良猫の姿が目に入る。

少年「いい気なもんだぜ」

   吐き捨てるように言って走り去る。


○ 隣家・リビング

   ぼんやりとテレビを見ている初老の夫。

   足音がし、スーツ姿の妻がリビングに顔

   を出す。

妻「(夫の姿を見て)ずっと働きづめだった

 んだから骨休めだと思ってのんびりしたら

 いいじゃない」

夫「ん? うん」

妻「じゃあ、行ってきます。洗濯物お願いね」

   妻、退出する。


○ 同・ベランダ

   洗濯物の入った洗濯籠を持ってやってく

   る夫。

   のんびりと寝ている野良猫の姿が目に入

   る。

   夫、野良猫に語りかけるように、

夫「やることがないってのは辛いもんだな」

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