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2008年10月

2008年10月28日 (火)

折れた傘

○ 駅前の道

   雨の中、ランドセルを背負った少年が傘

   を差して歩いている。

   傘の骨の関節部分がひとつ壊れており、

   そこを曲げたり戻したりしている。

少年「あっ」

   少年、何かを見つけてはたと立ち止まる。

   前方から歩いてきた男連れの女性(三十

   代前半)が少年を見てやはり同じ様にハ

   ッとする。

   少年、咄嗟に傘の骨の関節部分を折り曲

   げ、顔が隠れるようにする。

連れの男性「どうしたの?」

女性「ううん。なんでもない」


   通り過ぎていく二人。


○ マンション(夜)

   少年が傘をいじっていると先ほどの女性

   が入ってくる。

   女性、何も言わず奥の部屋へ行こうとす

   る。

少年「母さん。傘って折れてる方が役に立つ

 ね」


   女性、戻ってきて二千円差し出す。

少年「余ったらどうする?」

   そう言った刹那、少年にクッションが

   飛んでくる。

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2008年10月21日 (火)

運動会のそれぞれ

○ 某区立小学校の校庭

   運動会が行われている。

   小学一年生(ワタルもいる)の徒競走に

   父兄たちが声援を送っている。

   その中にワタルの両親(三十代)の姿があ

   ある。

母親「ワタルー」

父親「がんばれー」


   母親、腕時計を見て、

母親「もう少ししたら行くから」

父親「何だよ」

母親「言ったでしょ」

父親「ああ、面接か。今度はせいぜい潰れな

 いところにしろよ」

母親「(ったく)とにかく後のことお願いね」

父親「男に食わせて貰えばいいじゃないか」

母親「そうね」

父親「!?」

母親「別れたばかりでそんなのいるわけない

 でしょ」

父親「――」


   ゴールしたワタルが笑顔で手を振る。

   二人、笑顔で手を振り替えしながら、

父親「親がこんなでもちゃんと育つんだな」

母親「馬鹿」

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2008年10月14日 (火)

単身赴任と運動会

○ ××マンション・214号室(夜)

   スーツ姿の男(40)がいくつかの郵便

   物を手に入ってくる。

   ケータイの着信音が鳴る。

男「もしもし」

女(電話)「わたし」


○ オフィス街


   ケータイを掛けながら歩くスーツ姿の女(32)。

女「今夜、行っていい?」


○ 214号室

男「ああ」


   ケータイで話しながらいらない郵便物を

   ゴミ箱に捨てていく。

   そのうちの一つに男の目が留まる。


○ オフィス街

女「ご飯まだでしょ? 何か買っていくけど

 何がいい?」

男(電話)「悪い。今日はやめとこう」

女「えっ、ちょっと――」


○ 214号室


   男、ケータイをソファーに放るとそこに

   自分も体を沈める。

   テーブルの上には開封された封筒と写真

   が数枚。

   写真を一つ手に取りしみじみと眺める。

   小学一年生になる息子の運動会での写真

   で「パパ、お仕事がんばってね」という

   手書きメッセージが添えられている。

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2008年10月13日 (月)

防人の女神。磯山さやか ( アイドル愚考録 )

世間に「萌え」なる言葉が浸透してはや幾年。今では自分の嗜好を相手に伝える時、「私は××萌えなんです」などと説明することが、一般人の間ですら珍しくない。

(「ポニーテール萌え」や「ナース萌え」などがそれである)

それまで使われていたフェチが駆逐されたわけではなく、個人の好み、語感などから使い分けられているらしい。

さて、これまで私は自分にこうした嗜好があるとは思っていなかった。どちらかと言えば大抵のものは好き嫌いなく美味しく頂ける、雑食タイプであると考えていた。

しかし、これからは違う。私は自分のなかに眠る、ある特殊な嗜好に気付いてしまった。

私は海上自衛隊東京音楽隊萌えである。

どうして、私がこんな特殊な嗜好に気付いてしまったかを説明するためには、まず一冊の雑誌について語らなければならない。

諸君らは、MAMAMORという雑誌をご存知か。

殆んどの人が知らないと思われるので、軽く説明しておこう。

MAMAMORとは扶桑社が発行する、日本の平和をどうやって守っていくかを考える月刊雑誌のことで、防衛省唯一のオフィシャルマガジンでもある。

自衛隊訓練の様子や、今後の国防をテーマにした座談会などの硬い記事から、自衛隊の携帯食料(近頃ブームのミリメシのこと)を某局の大食い番組で人気を博した大食いタレントが食べつくすという、かなりバラエティ色の強い記事まであり、読書を飽きさせまいとする編集者の意向なのか、なかなかどうして懐の深い内容ではある。

しかし、今回取り上げたいのは、別にこの雑誌の硬軟取り混ぜた内容のことではなく、MAMAMOR11月号の表紙と巻頭グラビアを飾った、磯山さやかという美の女神のことである。

それにしても、ああ、何という美しさであろうか。

海上自衛隊東京音楽隊の制服がこれほど似合う女性が他にいるであろうか。

否、彼女だけであろう。

真っ白な生地に金モールをあしらった、シンプルだが優美な制服。その下には清潔な純白のブラウス。黒いタイが全体の印象を引き締める、よいアクセントになっていることも見逃してはならない。そして、下は黒のロングスカートで白い上半身と見事なコントラストを描いている。

表紙の一枚こそ、あまりその魅力を生かしきれていなかったが、中に収められたグラビアは完璧な作品ばかりだ。

空撮写真なのか、屋上にたたずむ彼女を上から撮ったグラビアなどは、彼女の美しい黒髪がふわりと広がって、もう何と表現しても表現しきれない、言葉の無力さを思い知らされるほどの美しさであった。

フルートを吹いているグラビアもよかった。

彼女のふっくらとした、愛らしい頬のまるみとフルートのシャープなシルエットがあれほど合うとは思わなかった。

私はフルートに激しく嫉妬せざるを得なかった。

名優フランキー堺の代表作に「私は貝になりたい」があるが、私は彼女の吹くフルートになりたい。

ところで、音楽とはただ美しく、心を和ませるだけではなく、人の心を揺さぶり、高揚させ、熱狂へと追い込む力も備えている。

戦争と音楽とは実はとても相性がよい。勇壮な音楽が兵士たちを鼓舞し、死地へ送り出すのは、洋の東西を問わず、また過去から今に至るまで、戦場における日常的な光景であり続けている。

私は臆病ゆえの戦争反対論者だが、もしも彼女の音楽に送られるのであれば、米国へのリベンジに打って出るのもやぶさかでない。

そんな突拍子もないことを考えるぐらい、私は今回のグラビアにやられてしまった。

まだ見ていない人はぜひとも見て貰いたいものである。

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2008年10月 7日 (火)

おじいちゃん子

○ 紅葉した山

   見渡す限りの紅葉の中を父親、母親、少

   年が歩いていく。

父親「こりゃすごいな」

母親「綺麗ね」


   手にしたカメラのシャッターを次々に切

   る父親。

   辺りを見回し惚れ惚れする母親。

   しかし少年だけは面白くなさそう。

   少年が母親のスカートの裾を引く。

母親「なに? 帰りたいの?」

父親「ははっ。子供にはわからないか」


○ 祖父の家・庭


   少年が祖父と縁側でお茶を飲みながら沢

   山の盆栽たち――中でも紅葉した楓の盆

   栽をしみじみと眺めている。

少年「やっぱりこれくらい慎ましいのがいい

 よね」

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