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2008年11月

2008年11月25日 (火)

失恋と傘

○ 雨の繁華街(40年前)

   沢山のカップルが行き交う通り。

   お洒落した優子(16)が傘も差さずに

   悄然と俯いて歩いている。


○ あばら家・中

   優子、玄関のドアを開ける。

   天井から雨漏りしている。

   雨水受けの丼などを手に右往左往してい

   た父、母、弟、妹が一斉に優子を見る。

優子「?」

   父、優子に傘を手渡す。

父「今、大工道具借りてくるから、それまで。

 なっ?」


○ 同・屋根の上


   雨の中、憤懣やるかたない顔の優子。

   屋根の壊れた箇所に座って服も着替えぬ

   まま傘を差している。

   傘を放り捨て、天を仰ぐ。

   少しして屋内から声。

母と弟と妹の声「おねーちゃん!」

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2008年11月18日 (火)

双子と湖

○ 高原の湖の畔

   夏。

   桟橋の突端に夏彦(11)が座っている。

   暇つぶしに文庫本を読んでいるがやがて

   退屈そうに寝転んでしまう。

声「なつひこー」

   沖の方で釣りをしていた夏彦の双子の

   弟・冬彦が吊り上げた立派な魚を手にボ

   ートから叫んだ。

冬彦「見ろよ、これ。やっぱり夏はいいな。

 夏最高!」


   夏彦、ムッとするが興味のないふりを装

   ってまた文庫本を読み始める。

夏彦「(小声で)なんで夏なんかあるんだ」


○ 高原の湖の畔


   冬。

   桟橋の突端に座り、暇つぶしに雪玉を凍

   った湖面に投げつけている冬彦。

声「ふゆひこー」

   少し先の湖上リンクではたくさんの人た

   ちがスケートを楽しんでおり、その中に

   一際上手に滑る夏彦の姿がある。

   手を振りつつ一際上手に滑ってくる夏彦。

夏彦「お前も来いよ。やっぱり冬は楽しいな。

 はははっ」

冬彦「うるせえ!」


   冬彦、傍らに積った雪を掴んで投げるが

   全然夏彦まで届かない。

冬彦「俺は冬なんか大っ嫌いだ!」

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2008年11月12日 (水)

藤井美菜とマガジンの小さな過ち ( アイドル愚考録 )

今回のコラムは、週刊少年マガジン49号の巻頭グラビア、藤井美菜を取り上げたい。

タイトルに「小さな過ち」と書いたが、勘違いされないよう予め言っておけば、このミスとはあくまでマガジン側のミスである。藤井美菜には何の責任もない。そのことを強調しておく。

ここで藤井美菜をご存じない方のために少し紙面を割く。

藤井美菜は今後の活躍が期待される若手女優であり、慶應義塾大学に通う現役大学生でもある。スマッシュヒットとなった映画『 シムソンズ 』で銀幕デビューを果たし、最近ではTBSの連続ドラマ『 BLOODY MONDAY 』の朝田あおい役を熱演している。

( これは余談だが、原作において朝田あおいの存在はかすんでいく一方であり、ドラマ版ではこの事態に対し、きちんとした救済措置が取られているのか心配でならない )

藤井美菜の魅力はその存在感にある。

圧倒的な華がある。というのではなく、何と言うか優しい空気感のようなものがあるのだ。

穏やかな春の陽射し。それも午後ではなく、午前中の極めて柔らかい光線である。

私は彼女を久々に出てきた癒し系の系譜として捉えている。

最近の人気アイドルたちは総じて元気が良く、自己主張の激しいアクティブなタイプが多かったと思われる。長く続く経済不況により、世に暗雲のように広がった憂鬱を忘れるためには、彼女らのような陽性のカンフル剤が必要とされたのであろう。よって長らく癒し系の出現はなかった。

( 長澤まさみをどの系譜に置くかは意見の分かれるところだが、私は彼女を癒し系として捉えることに躊躇いを感じる。長澤まさみについては、一度きちんとした考察が必要だろう )

しかし、どれほど美味な御馳走であっても何度も続けば飽きがくるもの。世間もパンチの効いた濃い味に食傷気味で、舌に優しい家庭の味わいが欲しくなる頃合だったのだろう。

ここに来て藤井美菜がじわじわと人気をのばしてきたのは、そういった事情があるからなのだ。

マガジン編集部でも勿論それは意識していて、今回のグラビアはいつもより大人しいかわりに、情感たっぷりの秋めいたグラビアに仕上げていた。水着のカットは一枚もなしである。

特に太陽の陽射しで彼女の頬にけぶる産毛を金色に輝かせたカットなどは特筆に価する。彼女のチャームポイントのひとつである、『 自然体 』を強く打ち出した、すばらしい演出であった。

それだけに惜しい。惜しすぎる。

マガジンは何故、彼女のことを「美少女」と呼んでしまったのか。

彼女は20歳である。それを少女と呼ぶのはまずかろう。

少年マガジンの中心層は、いかに漫画を読む層が広がっているとはいえ、やはり10代であろう。

10代の少年たちにとって彼女は少女ではなく、年上のお姉さんとなるはずだ。

そこをきちんと抑え、少年たちの憧れの存在として彼女を撮っていれば、もっといいグラビアになっていたと思われる。

( 個人的には彼女を図書館の中で見て見たい。司書役でもいいし、熱心にページをめくっている姿でも構わない。もし彼女が読んでいるのが、ハイデガーなどの哲学書だったりすると尚いい。憧れのお姉さんは、少年たちの手に届かない高尚な本を読んでいるべきなのだ )

少年マガジンはぜひとも近いうちに彼女を再登場させ、少年たちのマドンナとしての藤井美菜を撮影して欲しいものである。

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2008年11月11日 (火)

長靴の男

○ オフィスビルのとあるフロア

   足音がする。

   三十人程度の社員が忙しく働いている。

   一つだけ荷物の一切ない、使われていな

   い机がある。

   入り口のドアが開き、スーツ姿の何者か

   (中年男)が入ってくる。

   入室者に気づいた女子社員が入り口の方

   を見る。

女子社員「……?」

   中年男は上から下まできっちりとスーツ

   を着ているが、足元だけ黒いゴム長靴を

   履いており、そのアンバランスさが狂気

   を感じさせる(顔は映さない)。


○ 歩く黒いゴム長靴(十数分後)

   ――のアップ(ゴム長靴以外は見えない)。

   少しずつカメラを引いていき、やがて床

   が見える。

   長靴は血溜りとなった床を歩いている。

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2008年11月 4日 (火)

赤い風船

○ マンション四階の一室

   号泣する若い女。髪は乱れ、目は泣き腫

   らしている。

   室内はめちゃくちゃ。

   彼氏と一緒に写った写真を入れたフォト

   スタンドのガラスが割れ、床に転がって

   いる。

   若い女、椅子の背を持ち引きずりながら

   ベランダへ。

   椅子を踏み台にしてベランダの手すりを

   越えようと身を乗り出す。

若い女「!」

   突然、目の前に赤いものが――風船だ。

   風船の糸を掴む。

   不意をつかれ、頭の中が真っ白になって

   いる。

声「おねーちゃーん」

   幼い少女がマンション前のスペースから

   手を振っている。


○ 廊下

少女「ありがとう」


   若い女から赤い風船を受け取り去ってい

   く少女。


○ マンション四階の一室

   めちゃくちゃな室内を見渡す若い女。

   腹の虫が鳴く。

若い女「ハァー、目が覚めた」

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