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2009年3月

2009年3月31日 (火)

取り分

○ リビング

   エアコンの上で猫が寝ている。

   慶一(37)、ソファーで横になり、ぼん

   やりと猫を眺めている。

   史恵(37)、入ってくるなり猫を見てヒ

   ャッと小さな悲鳴を上げる。

   開いた窓から飛び出していく猫。

史恵「ちょっと、なんなのよ」

慶一「最近ちょくちょく顔を出すから餌をや

 ってるんだ」


   慶一、立ち上がり歩き出す。

   史恵、テーブル上のコピー紙を手に取る。

史恵「何も書いていないじゃない」

慶一「ん?(気のない返事)」


   慶一、窓から外を眺める。

史恵「荷物。私の物と、あなたのと、書き出

 しておいてって言ったでしょ」

慶一「猫はどうする?」


   猫は見当たらない。

史恵「えっ?」

慶一「猫の取り分さ」

史恵「(うんざりして)いいかげんにしてよ」


   史恵、退出。

   慶一、窓を開ける。

   すぐ傍の物陰から猫が姿を現し、近づい

   てくる。

慶一「シャー!(威嚇)」

   猫、逃げ出し、すぐに見えなくなる。

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2009年3月24日 (火)

葬儀

○ ××斎場・式場

   係員によって葬儀用具や花の片付けが行

   われている。

   廊下から誰かの走る足音がし、良一(38)

   が荒い息遣いで式場を覗く。

   すぐに顔を引っ込め、再び足音が響く。

   謙三(70)の遺影。


○ 同・法事会場

   葬儀の参列者など数十人が食事をとって

   いる。

「得がたい人じゃった」

「寂しくなるな」

「気を落とさないでね」


   喪主である故人の妻・絹子(71)に次々

   に声を掛ける参列者たち。

   別段気を落としている様子もなく平然と

   対応している絹子。

   良一、会場に入ってくると絹子に近づき、

   とても言いづらそうに、

良一「おばさん。僕、何ていったらいいか」

絹子「私なら大丈夫」

良一「いえ、そうじゃなくて。僕、今日、遅

 刻しちゃったから」

絹子「……」

良一「いや、違わないです。心配してます」

絹子「いいから、ご飯でも食べてらっしゃい」

良一「はい」

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2009年3月17日 (火)

株価

○ 新宿駅付近

   行き交う沢山の人たち。

   その向こうにこちらに背を向け立ち止ま

   っている少年の姿。

   大学生Aと大学生Bが歩いてくる。

   大学生B、手にしたパンフを見ながら、

大学生B「親父とお袋がもうちょい早くくっ

 ついてりゃあな」

大学生A「えっ?」

大学生B「就職だよ」


   大学生、パンフで大学生Aの体を叩く。

   就職説明会のパンフ。

大学生B「ちょっとズレてりゃ売り手市場だ

 ったっつーのに。ったく、こんな時代に誰

 がしたんだよ。おい(と何かを見つけ指す)」


   大学生A、見る。

   証券会社のウィンドウの前に立った制服

   姿の少年(17)が株価の表示をじっと

   見詰めている。

大学生B「高校生が株か。世も末だねぇ」

   歩いていく二人。

   大学生A、振り返って再び少年を見る。


○ マンション・少年の部屋

大学生A「安心?」


   参考書を片手に立っている大学生Aが言

   った。

   少年、机で勉強している。

大学生A「株価が下がるのが?」

   少年、机で勉強を続けながら、

少年「だってそうでしょ。何が何だかわから

 ない不安に比べたら、目に見える不安の方

 がずっと好きだな、僕」


   動き続ける少年のシャープペン。

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2009年3月10日 (火)

ケータイ以前

○ 玄関(夜)

T「30年前」


   玄関脇の台の上に置かれた電話。

   大吾(17)、足音を殺しながら階段を下

   りてきて電話に手を伸ばす。

   突然、背後から「大吾」と声が掛かる。

大吾(ビクッ)

母「ご飯、もうすぐだから」

大吾「(少しイライラして)わかったよ」


   大吾、階段を駆け上がっていく。


○ 大吾の部屋

   入ってきてドアを閉めるなり、大きく息

   を吐く。

   机の上には同級生の美少女の写真と映画

   のチケットが二枚。

   緊張の面持ちで喋り始める。

大吾「恵子さんはご在宅でしょうか。僕は同

 じクラスのカンダダダ……カンダダイダダ

 ……カンダンダ……」


○ 台所


   料理を作っている母。

   階段を駆け下りる音。

   戸を勢いよく開ける大吾。

大吾「何でこんな名前にしたんだよ!」

母「?」

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2009年3月 3日 (火)

雪嫌い

○ リビング

   ソファーにて手で隠しながらケータイの

   画面を見ている沙樹(16)。

弟「なになに(と覗く)」

沙樹「やーだ、スケベ(と隠す)」


   テレビの天気予報を見ている父。

父「明日雪だって」

沙樹「やった」

弟「えー、雪キライだっていってたじゃん」


○ バスの中(数日前の朝)


   外は雪が降っている。

   8分程度の客入りの車内に数人の乗客が

   乗り込んでくる。

   座席でぼんやり窓外を眺めていた沙樹、

   その内の一人を見てハッとする。

   乗りこんできた男子Aに車内にいた男子

   Bが話しかける。

男子B「あれ、チャリじゃねぇの?」

男子A「雪降ってっから」


   沙樹、こっそりケータイで男子Aを撮る。


○ 男子Aの画像

   ――をケータイの画面で見る沙樹。自室

   のベッドに寝転がりながら。

沙樹「キライではないのだよ、フフッ」

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