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2009年8月

2009年8月25日 (火)

おばあちゃん子

○ 一戸建て・廊下(朝)

   家の中には人気がな、チャイムの音だけ

   が響いている。

   奥からパジャマ姿の老女が眠そうに目を

   こすりながら歩いてくる。

   玄関までの途中にあるドアが開いており、

   リビングの中が見える。

老女「ああ。帰ってたの」

   リビングの奥、ソファーの陰で小さくな

   って震えている不良少年(17)。

老女「?」

   鳴り続けているチャイム。

   老女、玄関へと再び歩き出そうとする。

不良少年「行くなよ!」

老女「でも、お客さんが……」

不良少年「警察だよ」

老女「お前を捕まえにきたの?」

不良少年「もう駄目だ。おしまいだ」


   頭を抱えて泣き出す不良少年。

   老女、静かに奥へと戻っていく。

   なおも鳴り続けているチャイムに不良少

   年の不安は増大し、震えは大きくなる。

老女(off)「もう大丈夫だよ」

   不良少年、声を聞いて顔を上げる。

   古びた猟銃を持っている老女。

老女「おばあちゃんが守ってあげるからね」

   老女、ドアを閉める。

不良少年「(呆気にとられたまま)」

   少し間があってから爆音――猟銃の発砲

   音――が響き渡る。

   チャイムの音が止む。

   不良少年、驚きのあまり固まったまま。

   家の中を静けさが支配する。

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2009年8月18日 (火)

捨て猫

○ 道

   ランドセルをしょった少年が歩いてきて

   何かに目を留めて駆け寄る。

   道端にある段ボール箱で仔猫が鳴いてい

   る。

   少年、恐る恐る近づいて仔猫をなでる。

   仔猫の気持ちよさそうな様子を見て笑顔

   になる。

少年「(一転、表情を曇らせ)連れて行ってや

 りたいけど、ウチ、もう猫飼ってるから」


   立ち去ろうとする少年の袖を仔猫が噛み、

   じゃれる。

少年「(すまなそうに俯く)」


○ 自宅・子供部屋


   少年、元気なくランドセルを置く。

   ドアが開く。母親だ。

母「ねぇ、ミーがいないの。探してくれる?」


○ 同・玄関前

少年の声「ミー、ミー」


   ドアが開き、少年が出てくる。

少年「(キョロキョロしながら)ミー」

   猫が歩いてくる。先ほどの仔猫をくわえ

   ている。

   それを見た少年、興奮して家の中へと飛

   び込んでいく。

少年「ママー、ミーが猫拾ってきた!」

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2009年8月11日 (火)

現実

○ オフィスビル・屋上

   人気のない屋上。

   女(30)、切羽詰った様子で入り口のド

   アを開け、見回す。

   隅に人影――男(39)が独り、配管に

   腰掛けて膝の上に広げた弁当をじっと見

   詰めている。

   女、男を睨み、足早に近づいていく。

女「結婚やめるってどういうことよ?」

   男、弁当を見詰めたまま。

   品数が多く、見た目も綺麗な手作り弁当。

女「ねぇーー」

   男、弁当を差し出す。

男「食べてみろよ」

女「?」


   男、催促するように再度差し出す。

   女、いぶかしげな顔で弁当に箸をつける。

   食べた途端、「うっ」と顔をしかめて口を

   押さえる。

   ハッとする。

女「これ、お母さんが?」

男「認知症だよ」

女「……」

男「話には聞いていたけど、まさかウチのお

 袋がな、ハハッ(力ない笑い)」

女「……」

男「嫁さんになってくれなんて、言えるかよ」


   男、弁当を奪うと力任せに投げつける。

   散らばった弁当。

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2009年8月 4日 (火)

世代

○ 旅客機・機内

   滑走路を飛び立っていく旅客機。

   遠い目を窓外に向ける乗客――ジーンズ

   にTシャツというラフな格好の青年。


○ 東京・住宅街

   炎天下、スコップを手に汗だくになりな

   がらドブ掃除をしている中年の主婦A。

主婦B「(意外)どうなさったんです?」

   買い物袋を持って通りかかった主婦Bが

   主婦Aを見るなり目を丸くして言った。

主婦B「町内会の掃除にだって一度も顔を出

 したことないのに」

主婦A「息子の気持ちがわかるかと思って」

主婦B「は?」

主婦A「今日、出発したんです、カンボジア

 へ。何が社会貢献よ、大学まで出してやっ

 たっていうのにまったく」


   主婦A、手にしていたスコップを放り、

   地べたに座り込み天を仰ぐ。

主婦A「あー、やめた、やめた」

   遥か頭上を旅客機が飛んでいく。

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