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2010年3月

2010年3月30日 (火)

真夏のトタン

〇 田舎のとある農家・庭

   ギラギラと照りつける真夏の日ざし。

   どこからか子供の声。

   母屋の二階の窓に兄(8)と弟(6)。

   兄の手からソーダアイスを取り返そうと

   する弟と、からかい半分に渡さない兄。

   兄の手が滑り、アイスは窓の外――隣の

   納屋のトタン屋根の上に。

   涙ぐむ弟。

   兄、意を決し、素足のまま窓から外へ。

   母屋の瓦屋根の上へと出た兄。

   瓦屋根からトタン屋根へ。

   猛烈なトタン屋根の熱さに飛び退く。

   振り返ると弟が、行かなきゃ駄目、と睨

   んでいる。

   アイスが融けかかっている。

   兄、勢いをつけ、熱いトタン屋根の上を

   跳ねるように足を運ぶ。

   アイスを拾い上げ、そのまま弟に放る。

   放り投げられたアイスを手を伸ばしてキ

   ャッチする弟。

   なおも飛び跳ねていた兄、突然トタン屋

   根が抜けて落下。

   咄嗟に走り出す弟。見えなくなる。


〇 母屋・玄関

   階段を駆け下りてくる弟。

   つっかけを履こうとして思いとどまり、

   また奥へと走っていく。


〇 同・台所

   駆け入って来る弟。

   踏み台を流しの前に置くと、その上に乗

   ってアイスを水で洗う。

   少し洗ってアイスを嘗める。

   よし、と頷いて台所を飛び出していく。

弟の声「おにいちゃーん、だいじょうぶー」

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2010年3月23日 (火)

生存競争

〇 マンション・廊下(夜)

   エレベーターのドアが開く。

   塾のバッグを提げた少年がぐったりしな

   がらため息をつく。

   歩き出す。


〇 ××号室・玄関

   暗い玄関に入ってくる少年。


〇 同・リビング

   少年、入ってくる。

   日本酒を飲んでいる父親。既に酔っている。

父親「どうだ、一杯やるか」

   隣室から母親の声。

母親の声「馬鹿いってんじゃないの! いつ

 まで飲んでるのよ!」

父親「なに~」


   父親、隣室へ。

   隣室から父親と母親の口論が聞こえる。

   グラスに飲みかけの日本酒。

   少年、グラスに日本酒を継ぎ足す。

   一気に飲み干してプハーッ。

少年「やってらんねぇぜ」

   退出しようと歩き出すが、よろけてドア

   枠に頭をゴツン。

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2010年3月16日 (火)

助言

〇 マンションの一室(夜明け前)

   携帯電話が鳴り、ベッドから手が伸びて

   電話に出る。

男「もしもし?」

   寝不足で不機嫌な様子。

男「今? お前、何時だと思ってるんだよ。

 行けるわけないだろ。飛び降りる? 何を

 馬鹿なこと言ってーーおい、ちょっと待て

 待て!」


〇 通り


   車の通りの多い道。

   パジャマの上にコートを羽織った男が車

   道のすぐ傍にいる。

   目の下には寝不足なためのくま、憂鬱な

   顔で寒そうに体を動かしている。

   タクシーを止め、乗り込む。

男「〇〇橋まで」

運転手「〇〇橋?」


   運転手、男の出で立ちをミラーで確認し、

運転手「あんたまだ若いんだから、命は大事

 にした方がいいよ」


   男、しばしわけがわからずポカンとして

   いるが、少し考えてから納得したように

   二三度頷く。

     ×     ×     ×

   男を置いて走り去るタクシー。

   携帯電話が鳴る。

   ポケットから携帯電話を出すと、それを

   思い切り放り投げ、歩き去る。

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2010年3月 9日 (火)

コウモリの仔

 ラジオドラマのシナリオを書いてみました。

 長さは原稿用紙8枚。

 いつも書いているシナリオ(400字程度)よりは長めです。

 ラジオドラマのシナリオはあまり馴染みのないものだと思いますが、音を想像しながら読むのはなかなか楽しいと思います。

 むしろ映像用のシナリオよりも読みやすいと思いますので、ぜひ一度読んでみてください。  

続きを読む "コウモリの仔"

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2010年3月 2日 (火)

折り紙

〇 銀行

   小柄で真面目そうなスーツの男が自動ド

   アのところで躓きかけながら入ってくる。

   困った様子でキョロキョロ見回す。

   行員が近づいてきて話しかける。

行員「今日はどういったご用件で」

スーツの男「預金を下ろしたいんですが」

行員「でしたらこちらでご記入を」


   記入コーナーへ促し、用紙を出し、紐の

   付いたボールペンを渡す。

行員「住所氏名と口座番号を」

スーツの男「口座番号……」

行員「お忘れ、ですか?」

スーツの男「持ってないんです」


   用紙で折り紙を始める。

行員「持って……口座を、でございますか? 

 お客様?」


   スーツの男、用紙の紙飛行機を飛ばす。

   ゆっくりと滑空する紙飛行機。

   全ての行員、客の目が紙飛行機に集まる。

   何かが引きちぎられる音。

   視線を戻す行員。

   ボールペンの尻から垂れた紐ーー千切れている。

   スーツの男が背後から行員の首に腕を回し、

   ボールルペンを首筋に刺すように当てる。

スーツの男「僕の預金じゃないんですよ」

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