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2016年8月 4日 (木)

これがあたしの生きる道

○ レストラン・フロア

  席はそれなりにうまり、穏やかな店内。

  パスタを運ぶウェイトレス、桧鶴(ひづる♀20)。

桧鶴N「私には取柄がない」

  蹴躓いてサラリーマンの背中にパスタをかけてしまう。

     ×     ×     ×

  気の弱そうな店長とともに、

  激怒するサラリーマンに平謝りする桧鶴。

 

○ レストラン・厨房

  調理人の格好をした桧鶴。

  野菜を切ろうと包丁を握る。

桧鶴N「人並みのことすらまともにできない」

  包丁で指を切って血が噴き出し、あわてた桧鶴は

  火にかけていた鍋にぶつかって

  隣の人に煮立った鍋の中身をかけてしまう。

  悶絶する隣の人。

     ×     ×     ×

  気の弱そうな店長に平謝りする桧鶴。

  店長は困り顔で洗い場を指差す。

 

○ レストラン・洗い場

  皿を洗う桧鶴。

桧鶴N「まったくのダメ人間なのだ」

  洗った先から皿を割っていくが、それに気づかない。

  気の弱そうな店長、困り顔で桧鶴を止めようとする。

 

○ 楽屋

  鏡の前でしょぼんとして座っている桧鶴。

桧鶴N「そんな私でも、情熱を燃やしてるものがある」

  ドアをノックする音。

桧鶴「(びくっとして)はい!」

  鏡に映っているドアが開き、男性が顔だけ出して、

男 「桧鶴、出番だよ」

 

○ バーのステージ

  客に拍手を送られ、

  手を振りながら退場するバンド。

  照明が変わり、静かになる客席。

  ドレスを着た桧鶴が登場、マイクの前に立つ。

桧鶴N「それは唄うこと! 歌は私の生きる証なんだ」

  唄い出すが酷くヘタ。

  一斉に引きつり、のけぞるお客たち。

  気づかずに情感込めて唄っている桧鶴。

  ステージに物が投げ込まれるが、なおも気づかず唄う。

  顔におしぼりが当たってはじめて気づく。

  「やめろー」「ひっこめー」などなど罵声とともに、

  ステージに物を投げ込むお客たち。

桧鶴N「たとえヘタであっても、

 私は唄う事が生き甲斐なんだ!」

店内アナウンス「物を投げないでください。

 物を投げないでください」

桧鶴「(お客に向かって)うるせー!

 黙ってあたしの唄を聴けー!」

  ヒートアップするお客。

  頭に灰皿が当たり、

  かえるがつぶれたような声を出す桧鶴。

桧鶴「(お客に向かって)上等だ!

 かかって来いやー!」

  と右手をお客に突き出す。

  手にはモザイク。

  騒然となるフロア。

  カウンターで頭を抱えるマスター(♂50)。

  カウンターに寄りかかってステージを

  冷ややかに眺めているウェイトレス(♀21)。

ウェイトレス「(あきれたように)毎度毎度あれで、

 よくステージに上げますね、マスター」

マスター「(渋顔で)……うん、それがね、

 彼女が立つ日はなぜか、席が全てうまってしまうんだ」

  客に向かって吼えている桧鶴を遠目に見ながら

マスター「なんでかな。へったくそなんだけどさ、

 彼女の唄、なんか引っかかるんだよ」

  酒瓶が桧鶴にヒット、卒倒する。

ウェイトレス「気のせいじゃないっすかぁ?」

マスター「(苦笑いで)そうかも」

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コメント

サミィ さん

おはようございます。

大阪からです!

こちらでよろしかったでしょうか。

こちらのブログには初書き込みです。

皆さん、けっこう時間をかけて書き込んでいるのでしょうか。それとも即興的に?

すごいパワーを感じますね。

今日も研修頑張ります!!!

投稿: 「感動創造」 | 2007年9月22日 (土) 06時41分

>> 「感動創造」さん
ありがとうございます。
コメントいただけると励みになります。
良かったらまた見に来て下さいね。

投稿: サミィ | 2007年9月23日 (日) 00時37分

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