« ヤヌスの鏡 | トップページ | 酔える下戸 »

2016年8月18日 (木)

痛し痒し

◯ バー

弥葉「っはよーっす」

   西山弥葉(にしやまみつは♀21)

   入り口から入って来る。

   しかし、誰もいない。

   開店前の閑散とした店内。

   店の奥をのぞく弥葉。

弥葉「マスター?」

   返事は無い。

   ステージにはギター、ベース、ドラムなど、

   バーの楽器が置いてある。

   ベースが目に留まる弥葉。

   おもむろにベースを手に取り、一弾きしてみる。

   重く響く音。

弥葉「……」

   ベースを弾く弥葉。

   無表情で汗ひとつかかないが、

   それとは裏腹に情熱的なビート。

   弾く。

   弾く。

   弾く。

   弾き終えた弥葉、うっすら汗をかいているが、

   あくまで無表情。

   客席から拍手。

   見上げるとマスターがにこやかに拍手している。

     ×     ×     ×

   店内はお客でいっぱい。

   ステージはジャズバンドが演奏している。

   演奏を聴く者、会話を楽しむ者、

   銘々に楽しんでいるお客たち。

   カウンターでグラスを拭いているマスター。

   ウェイトレス姿の弥葉、グラスを下げて来た。

マスター「お、ありがとう」

弥葉「今日もいっぱいっすね」

マスター「ああ。それにしてももったいない」

弥葉「何がっすか?」

マスター「おまえのベースだよ。

 あれだけ弾けるのに披露しないなんて」

   客席から拍手。

   ジャズバンドが手をふりながら退場して行く。

   弥葉、それを眺めながら

弥葉「……別に。ただの趣味なんで。

 人に聴かせたくて弾いてるわけじゃないっすから」

マスター「うまく行かないもんだな。

 世の中にはへたくそでも人前に立ちたがる

 ヤツもいるってのに」

   色めき立つ客席。

   ステージでは桧鶴(ひづる♀20)

   へたくそな歌を唄っている。

弥葉「(桧鶴を見て)いっしょにされるのは心外っす」

   苦笑いするマスター。

|

« ヤヌスの鏡 | トップページ | 酔える下戸 »

◇Samiano de Angelis」カテゴリの記事

●ショートシナリオ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/446045/8246996

この記事へのトラックバック一覧です: 痛し痒し:

« ヤヌスの鏡 | トップページ | 酔える下戸 »