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2016年10月13日 (木)

Adirato

◯ バー

   店内を掃除しているマスター。

   入り口のドアが開く。

   振り向くと桧鶴(ひづる♀20)が立っている。

   気に留める素振りもなく、

   桧鶴に背を向け掃除を再開する。

マスター「どうした」

桧鶴「唄わせてください」

マスター「やめたんじゃなかったのか」

桧鶴「唄いたいんです。どうしても唄いたいんです!

  一度はやめました。

  始めはそれで楽になったけど、あたしの中には

  常に唄があったんです。

  それに気づいた時から唄わない事が苦痛になったんです」

マスター「ステージには上げられないと言ったはずだが」

桧鶴「……唄わせてください」

マスター「だめだ」

桧鶴「マスター」

マスター「明日、店に顔を出しなさい」

桧鶴「え?」

マスター「唄わせようってんじゃない。客としてだ」

桧鶴「どういう……?」

マスター「開店の準備をしなきゃいけない。

  もう帰りなさい」

桧鶴「はい……」

   店を後にする桧鶴。

   入れ違いに弥葉(みつは♀21)が入って来る。

弥葉「おはようございます。桧鶴、来てたんですか?」

マスター 「そんな事どうでもいいだろう。

  それより、遅いじゃないか。

  もっと早くに来てなきゃだめだろう」

弥葉「え?いつもより15分も早いですけど?」

マスター「つまり普段から遅いと言っているんだ」

弥葉「いつも、こんなに早くに来るなんて他にやる事無いのかって

  言ってませんでしたっけ?」

マスター「それは……言葉の綾だよ。

  もういい。早く支度して来なさい」

弥葉「……。はい」

  奥に引っ込む弥葉。

  くすりと笑い、

弥葉(心の声)「桧鶴が来た事がよっぽどうれしかったんだな」

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