◇しよう

2007年12月 1日 (土)

実録・白い悪魔(完結編)

@1940年、冬戦争(ソビエトとフィンランド間の戦争)真っ最中のフィンランド領内。

フィンランド軍の後方陣地。

多くの新兵が射撃訓練に没頭している。

若い新人兵士A、上手く的を射抜けずに苛立っている。

兵士A「くそっ、また外した!」

呆れ顔の仲間の新人兵士B。

兵士B「駄目だな。お前は短機関銃持って敵陣に切り込めよ」

兵士A「黙れ。俺もシモ・ヘイヘやスロ・コルッカみたいな凄い狙撃兵になるんだ!」

兵士B「無理無理」

話しているAとBの後ろを通り過ぎる人影が。

愛用のモシン・ナガン狙撃銃を持ったシモ・ヘイヘその人。

兵士A「あ…」

兵士B「へ、ヘイヘ兵長…」

ヘイヘ、その二人の横にシートを敷いて寝転がり、銃を構える。

ヘイヘ「…標的までは150mかな?」

兵士A「は、はい、その通りです」

ヘイヘ「悪いが、観測手を頼めるかな」

兵士A「よ、喜んで!」

見ると、ヘイヘの狙撃銃には望遠スコープが装着されていない。

兵士B「ヘイヘ兵長、スコープはどうされました?」

ヘイヘ、意外そうな顔で兵士Bを振り向く。

ヘイヘ「…レンズに光が反射したら、位置を悟られるじゃないか」

絶句する兵士B。

(通常、遠距離からの狙撃にはは3~4倍率のスコープを使う。使わないと普通の兵士なんかでは殆ど狙いなんぞ付かないのである)

いつの間にかヘイヘの腕前を見ようと周りには人だかりが出来ている。

ヘイヘ「始める。1分だ」

兵士A「り、了解」

双眼鏡で標的を確認する兵士A。

ヘイヘのライフルが咆哮する。

兵士A「命中!」

ヘイヘは淡々と銃を発射し、廃莢し、狙いをつけ、また発射する。

兵士B「す、凄い…正に百発百中だ。しかも何て早さだ…」

ヘイへは普通の兵士の半分以下の時間で狙いを付けて発射し、標的に当てている。

異様な興奮に包まれる兵士達。

兵士A「残り10秒!」

兵士B「50秒で13個命中…神業だ…」

ヘイヘ、淡々と射撃を続ける。

兵士A「5、4…」

ヘイヘ、15個目の標的を打ち抜く。

兵士「2、1、0!」

0と同時に放たれた銃弾は、標的を僅かにそれ、後ろの土手に命中する。

あーっ、と声を上げる兵士。だが、すぐに感嘆の声に変わる。

*「なんてこった、1分で16発中15発命中、しかもすべてド真ん中に、だ!」

*「信じられない!」

賞賛の声にも表情を変えないヘイへは、一つ首をかしげる。

兵士A「どうしました?」

ヘイへ「…どうしたのかな。最後、標的を外すなんて…今日は駄目だな」

一同、言葉を失う。

ヘイヘ、まだ何かブツブツ言いながらシートを畳み、愛銃をひと払いして立ち上がる。

兵士A「へ、ヘイへ兵長」

ヘイへ「何か?」

兵士A「何か、狙撃にコツと言うか…秘訣はあるんですか」

ヘイへ「練習だ」

兵士A「れ、練習…」

ヘイへ「頑張ろう。共に祖国を守る為に」

敬礼するヘイヘ。

兵士A「は、ハッ!」

兵士A以下、その場の全員が敬礼を返す。

ヘイヘ、まだ首をかしげながら「調子が悪い…」と呟きながら立ち去る。

兵士A「よ、よーし、練習だ!」

兵士B「おう!」

…調子が悪い、というのは最もな話で。

その日、1940年3月6日にヘイヘはソヴィエト軍スナイパーの狙撃により、あごを撃ち抜かれるという重傷を負う。

友軍に救出されてかろうじて一命を取り留め、3月13日に意識を回復した。

が、冬戦争はその前日、モスクワでの講和条約締結を以て終戦を迎えていたのである。

終戦後、ヘイヘはグスタフ・マンネルヘイム元帥と面会し、コラー十字章を受勲、兵長から少尉へと5階級もの特進を果たした。

その後戦場に出ることは無く余生を過ごし、2002年に96歳でこの世を去った。

白い悪魔は意外に長生き。

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2007年11月17日 (土)

サイクルモード、自転車について語る

(自分の日記から、一部内容を追加して転載)

今年も今週末、サイクルモードが幕張にやって来た。

各社の2008年モデルの自転車(ロード、MTB、小口径、リカンベントetc…)が一同に介するビックイベント。

なおかつ普段絶対乗れないような高級車にも試乗も出来ると言うスバラシイ場所なのです。

まあ、自転車に乗り始めて1年チョイのペーペーが感想を語るのもおこがましいですが、一応。

どうなんでしょう。総括としては流れが停滞している感じですかねぇ。

もちろん、各社ともフラグシップモデルをこれでもかと出してきてるわけですが。

フレームは高剛性、ダウンチューブ、BB周り、チェーンステーを巨大化して安定感を得ている。

方向としては全く間違っていない。

間違っていないけれど。正直、面白味には欠ける。

一応各社ハイエンドバイクを15以上も試乗してみた結果だが、結局は微妙な乗り味の変化でしかない。

その微妙な変化こそが大事なのだろうが…。

(ま、今年最も革新的といわれるTREKのMADONには乗れないままこれを書いているのだが…)

正直な所、カーボンバイクが主流になった時点から今年までで、ある程度の所までは行き着いてしまったのだろう。

オートグレーブによるフレームの一体成型やカーボンナノチューブ技術、あるいはラグの接着技術の向上。

それ以上先は?と問われれば、それを答えられたメーカーが今後のトレンドを作っていくのだろう。

何かこう、自分的にはもっと尖ったものを期待している部分もあるのだが…。

結局大手メーカー側としては、そういう「売れるか解らない」ものを冒険して作る必要は無い訳で。

むしろ今はそういう冒険を犯せない、油断できない時期にあるのも確かだ。

そういった中で、頑張って欲しいのがいわゆる小売店の方々だ。

何と言うか、ユーザー志向というか「自分で使って良いもの」を売っている(輸入している)所が見受けられた。

「自転車はこうでなくちゃならない、だからこういうのを扱っている」という信念を感じる。

むしろ、自分の扱っているモノ以外は認めねぇ的な迫力すら感じた。

こういう尖ったのが、自分は大好きだ。

「これは私の自信作です」なんて言って試乗させてくれたら、それだけで嬉しいというものだ。

あとは、意見のフィードバックが得られそうなのが良い。

基本的に乗ったすべての自転車は、返すとき担当者にどんな些細な事でも感想を言った。

だが、大手メーカーの自転車には「これはこういうコンセプトですね」とは言えても「こうした方が良い」とはとても言えない。

(まあ、大手のハイエンドの殆どは文句の付け所のないものばかりだったけど…)

だが、小売店の自転車は「これはどうしてこうなのか」「こうした方が良い」と言う意見も言いやすい。

…言わなくてもあちらから延々と説明してくれる事が殆どなのだが。

モノ作り、という観点では、やはり製作者が現場(レースやライドなど)に近いほうがいい。

今日会場で、MTB乗りにとってはある意味「神」とか「開祖」とも言える一人、ゲイリー・フィッシャーが自分のブースに来てサイン&握手会をしていた。

その後何気なく別会場にあるマウンテンバイクの常設コースに来て見たら(ここではMTBの試乗をやっている)、何だかデカイ外人が凄い勢いで走っている。

ゲイリー・フィッシャーその人だ。

その彼が、一般の試乗者に混じってコースを何週もしている。

ファンからすれば、シューマッハと同じサーキットコースを走ったり、アントニオ猪木に卍固めをかけてもらうのと同じ現象である。

もちろん彼自身は始めっから自転車乗りな訳だが、実際にコースを走る様子は実に楽しそうだった。

彼自身が楽しんでいるから、自転車を作れる。これ以上の説得力は無いだろう。

(まあ、ゲイリーフィッシャーブランドは大手ブランドの傘下な訳だが)

自転車乗りには、色々車体を買って乗り換えたら最後はフルオーダー、みたいな流れがある。

まあ、バイクや車や他の趣味でもそういうのってあると思う。

小売店で作られる(作ってもらう)フルオーダーのオンリーワン自転車、というのも一つの夢ではないかなぁ。

でも、昨今の自転車業界は景気がいいとは言えず、小さい会社程不利な状況にある。

自分だけの最高に尖ったバイクを(ある程度のお値段で)オーダーするのも難しくなるのは確実だろう。

残念な事だが。

今年はある意味各社様子見的な部分も見受けられた。

2009年には、何か一つ、度肝を抜くようなモノの発表を切に期待したいと思う。

あ、ハイエンドの自転車の値段はもう度肝を抜かれてます(汗)

各社の皆様、偉そうなことぬかしてスイマセン。

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2007年11月11日 (日)

チェザーレ

会社員、野村の特技は「寝ること」。

何時でも、何処でも眠れてしまう。というか、起きてから寝るまでずっと眠い。

仕事中に転寝などはしょっちゅう。移動中の電車でも、車の運転中でも、何時でも眠ってしまう。

だが、彼が眠っても仕事はいつの間にか片付いているし、車も事故を起こしたことはない。

いわゆる「小人さんが寝ている間にやってくれた」という奴だ。

むしろ、彼は眠っている間の方が優秀な人間だった。

ある日彼が寝ているとき、覚醒と睡眠の狭間でついに小人さんを発見する。

小人さんは彼が寝ている間に体を動かして善行を行い、陰徳を積んでいるという。

そして、徳が高くなった小人さんは神様になれると小人さんは語る。

それならば、と野村は積極的に眠り、小人さんに体を貸し続ける。

その結果、野村は一日の大半を寝て過ごす事になる。いい夢を見ながら。

むしろ起きるのが億劫になってくる。

そんなある日の真夜中、ベッドで寝ていた野村は偶然にも小人さん同士の会話を耳にする。

実は小人さんが善行を積んでいるというのは真っ赤な嘘だった。

小人さんの正体は、地底に住む地球先住民族だった。

元は鉱性生物だった彼らは肉体を地球の地殻と同化させ、精神として生き続けていた。

そこで地表を支配した人間が眠っている間に精神を入れ替え、人間社会をのっとろうと画策していたのだ。

そして、最終的には地球を支配すると言う計画だった。

だが、野村にとってはどうでも良かった。

ただ、彼は眠れればよかった。

という夢を野村は見て、目が覚めた。

朝、満員の通勤電車で居眠りしながら思った。

誰が人間社会を支配しようと、それで何が変わるというのか。何が変わるわけでもない。

結局人間はルールに従って、こうやって暮らす以外に何も出来ないのだ。

と、野村の精神を支配する小人さんは野村にそう思わせた。

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2007年10月27日 (土)

実録・白い悪魔2

@1939年、冬戦争(ソビエトとフィンランド間の戦争)真っ最中のフィンランド領内。
コラー河を臨む森の中。
フィンランド領内に侵攻したソビエト軍の歩兵師団が待機している。
その数4000人。
ソ連軍師団長「何も『白い悪魔』が相手とはいえ、歩兵一個師団も必要は無かろう」
ソ連軍政治委員「同志将軍スターリンは『白い悪魔』の噂を聞きつけ、大変憂慮されている」
ソ連軍政治委員「念には念を入れよ、だ。同志師団長」
(政治委員…ソビエト共産党直属の軍付き政治指導者。督戦官のようなもの)

@コラー河近く、フィンランド軍の陣地
丘に作られ、巧みに偽装された陣地。
フィンランド軍の中隊の士官が集まっている。
少尉A「…報告では、イワン(ソビエト人の僭称)の歩兵一個師団がこちらに向かっているそうです」
少尉B「も、もう駄目だ!中尉、陣地を放棄して撤退しましょう!」
中尉「馬鹿モンが!逃げるったって、何処に逃げる。逃げ場所なんて無い」
少尉B「では、皆ここで死ねと言うんですか!」
少尉A「そうだ!祖国を守るために、死ぬまでに一人でも多くイワンをブチ殺すんだ!」
紛糾する士官達。
片隅で愛銃モシン・ナガン狙撃銃の手入れをしていたシモ・ヘイヘが一言。
ヘイヘ「…一人頭125人倒せば、それで済む」
静まり返る士官達。

@コラー河を臨む森の中
ソ連軍師団長「攻撃開始!」
合図を受けて、いっせいに突撃するソビエト軍の歩兵。
ソ連軍政治委員「行け!赤軍狙撃兵の勇気と豪胆の見本を示せ!」
ソ連軍政治委員「立ち止まる奴、逃げる奴はその場で射殺する!覚悟しておけ!」
ソ連軍政治委員「(…これで『白い悪魔』は終わりだ。この手柄で俺は出世間違いナシだ!)」
x        x        x
戦闘開始から1時間後。
銃声と爆音が森の奥から絶え間なく続いている。
ソ連軍政治委員「…まだ終わらんのか」
ソ連軍師団長「そのようですな」
x        x        x
戦闘開始から2時間後。
銃声と爆音が森の奥から絶え間なく続いている。
ソ連軍政治委員「…誰も戻って来んな」
ソ連軍師団長「戻ってきたら貴方に撃ち殺されますからな」
x        x        x
戦闘開始から3時間後。
銃声と爆音が止んだ。
ソ連軍師団長「終わったようですな」
ソ連軍政治委員「全く、時間が掛かりすぎる。この師団は一体どうなっておる」
師団長、政治委員を一睨みするが、すぐに森に視線を戻す。
ソ連軍師団長「…戻ってきましたな」
一人のソ連軍歩兵が森から出てきた。
ソ連軍歩兵「…報告します」
ソ連軍政治委員「どうした。『白い悪魔』は殺ったのか」
ソ連軍歩兵「我が歩兵師団は…全滅…す…」
バタリと前のめりに倒れる歩兵。
ソ連軍政治委員「ひっ!」
助けを求めるように師団長に振り返るが、その時一発の銃声が。
政治委員の目の前で師団長の頭が吹き飛び、残った遺体はゆっくりと後ろに倒れる。
ソ連軍政治委員「ばっばっ馬鹿なあぁ!」
叫んだ彼も、一発の銃弾を後頭部に浴び、脳漿を撒き散らしながらフィンランドの大地に倒れる。

@フィンランド軍陣地
煙の上がるモシン・ナガン狙撃銃から顔を上げるヘイヘ。
彼らフィンランド軍の陣地の前には雪の台地が見えないほどソ連軍歩兵の死体が遺棄されている。
兵士A「やった!勝ったぞ、ブラヴォー!」
いっせいに歓声を上げる満身創痍のフィンランド軍。
歓喜の渦の中で、ヘイヘは一人銃の手入れを始める。
兵士B「やったぞ、おい、やったぞ!…あ、中尉殿!」
頭に包帯を巻いた中尉がやってくる。
中尉「やったなヘイヘ。見事な腕前だった」
ヘイヘはちょっと微笑んで答える。
ヘイヘ「いえ、腕前は問題ではありません」
ヘイヘ「足場の悪い所を密集して突撃してくれば、当然の結果です」
ヘイヘ「敵はあちらからどんどんやって来る、こちらは狙いたい放題。カモ猟より簡単です」
戦前はカモ猟で生計を立てていたヘイヘ。
詰る所、ソ連軍歩兵はカモより弱かったわけである。ヘイヘの前では。
(本当はそれなりに強いんだけど…相手と場所が悪かったネェ)

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2007年10月20日 (土)

実録・白い死神(または生きた死亡フラグ)

@1939年、冬戦争(ソビエトとフィンランド間の戦争)真っ最中のフィンランド領内。
とある冬の夜、コラー河を臨む森の中。
フィンランド領内に侵攻したソビエト軍の歩兵小隊が待機している。
焚き火を囲み、皆で寒さ凌ぎにウォッカを飲んでいる。
兵士A「畜生、フィンランド野郎どもめ。隠れてばかりいやがって」
兵士B「そうだそうだ、臆病者どもめ」
同意する兵士達。
小隊長「ここは奴らの土地だ。奴らを甘く見るな」
兵士A「小隊長、何をビビッてるんですか。奴ら単なる田舎者ですぜ?」
小隊長「お前は知らんのか、『白い死神』を」
兵士B「白い悪魔?何ですかそれは。御伽噺か何かで?」
小隊長「知らなければ教えてやる。ここらに『白い死神』と呼ばれる凄腕の敵狙撃手がいるらしい」
小隊長「話では、奴の潜む林の中に足を踏み入れた小隊が、1時間後には奴一人のために全滅したそうだ」
兵士A「またまた、冗談でしょ?」
小隊長「その小隊を率いていたのは俺だからな。確実な話だ」
静まり返る小隊。
小隊長「いや、冗談だ。そこに居たら俺は死んでた事になるじゃないか」
一瞬の後、爆笑する小隊。
兵士B「全く、小隊長は話が上手い」
小隊長「ま、その『白い死神』の噂も体の悪い作り話だろうさ。隊を全滅させた無能な指揮官とかのな」
兵士A、笑いながら立ち上がる。
兵士A「スイマセン、ちょっと用足しに」
兵士B「おい、『白い死神』に会ったらヨロシク言っておいてくれよ」
兵士A「ああ、デートにでも誘ってみるさ」
爆笑する小隊。

x         x         x
少し離れた木の根元。兵士Aが用足ししている。
兵士A「ふぅぅ、ちっと飲みすぎたか」
道具を仕舞ったその瞬間、銃声が響き渡る。
兵士A「ったく、何処の馬鹿だ。銃でも暴発させたか…」
しかし、銃声は散発的に続く。
兵士A「…て、敵か!」
銃を持ち直して、小隊に戻る兵士A。

@ソビエト軍小隊陣地
慌てて陣地に戻った兵士A。
兵士A「敵襲だ!…って、あれ…」
そこには先程と変わらない小隊の姿が。兵士A、元の席に戻る。
兵士A「なぁんだ、別の陣地か。でも念のために警戒しておきますか、小隊長?」
小隊長に向き直る兵士A。額に穴の開いた小隊長、無表情のままゆっくり崩れ落ちる。
兵士A「ひっ!お、お前ら小隊長が…」
と、小隊が皆雪の上に倒れている。
兵士A「し、白い…死神?」
何か得体の知れないプレッシャーを感じ、走りだす兵士A。
兵士A「そ、そうだ!後方には戦車が居るじゃないか。戦車砲で一掃してやる!」
やがて、兵士Aの前に一台の戦車が姿を現す。兵士A、戦車の砲塔によじ登る。
兵士A「お、おい!前方の森に狙撃手が…」
砲塔に上半身を出していた戦車長、何も言わずに倒れこむ。額には銃撃の跡が。
見れば、戦車の周辺には頭を射抜かれた戦車兵が倒れている。
兵士A「ひっ…ひぃいぃ!」
銃を投げ捨て、雪に脚をとられながらも森の奥に逃げ出す兵士A。

@少し離れた丘の上
森を見下ろす雪に覆われた丘。その頂上付近の雪の中から銃口が突き出している。
暫らく様子を伺っていたが、やがて雪を被ったシートの下から真っ白な防寒服を着た男が姿を現す。
小柄なその男は、シートについた雪を払い、身長ほどもあるライフルを背中にくくりつけた。
そして、シートの下に隠してあったスキーを装着すると、悠々と夜の森の闇に消えていった。

彼こそが冬戦争において「白い死神」と恐れられた男、シモ・ヘイヘ。
開戦から負傷までの僅か100日で、正式確認されただけで502人のソビエト兵を狙撃、さらにサブマシンガンでも200人以上を射殺することになる。
今夜はその100日の内の1日。死んだのは、そのスコアのほんの一部の人間に過ぎない。

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2007年10月 6日 (土)

100マイルの孤独

僕は何処へ行くのだろうか。

その答えは何処にあるのだろうか。

その答えを求めて、去年は100マイル走った。

そして思った。

答えなんか無かった。

そこにあったのは100マイルと言う孤独

解ったのはそれだけだ。

だから僕は、今年も100マイル走った。

そして、少しだけ、ほんの少しだけ解った。

恐らく答えはゴールには無い

ゴールの先、100マイルの先、それより遥か彼方にあるのだろうか。

多分、答えなんか無い

それでもいい。

何処を目指すとか、何を目指すとかじゃない。

多分、これからも走り続ける

それが、答え。

…うん、つまり何が言いたいかと言うと

「ホノルルセンチュリーライド楽しかったよ」ってこと

ヽ( ´ー` )ノ

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2007年9月22日 (土)

ハーベイ・ウォールバンガー

男は思い出せなかった。

ふと仕事中に浮かんだ名前「ハーベイ・ウォールバンガー」

…何処かで聞いた事はある。確かに聞いた事がある。

しかし、名前以外は何も思い出せない。

こういうことは、一度気になりだすと喉に引っかかった魚の小骨のように気になる。

うーん、取引先の顧客は…。外国人いないし。

電車の中刷りにあった駅前の英会話学校の先生の名前…じゃないな。

あ、そうだ!あの有名な映画俳優!って、そりゃマーク・ウォールバーグだ。

「ディパーテッド」面白かったなぁ…って違うだろ。

惜しい所カスった気はするが、悩めば悩むほど、思い出せないハーベイ。

お陰で仕事には集中できないし、イライラして来た。

トイレで用を足しているときも、肝心の事に集中できない始末。

おまけに頭の中の小人さんが「ハーベイ♪ハーベイ♪ヘヘイヘイ」と歌いながらダンスを始めた。

畜生!うるさいぞ!

ハーベイって何なんだ!

ガン!

やるせなさにトイレの壁を殴りつけるが、ただ手が痛くなっただけだ。

ん?

「ああっ!これだ!」

結局、ハーベイも俺も、悩んだときは壁を叩いたと言うオチだ。

※ハーベイ・ウォールバンガー (Harvey Wallbanger)
スクリュードライバーにガリアーノを加えたレシピ。
カリフォルニアのサーファー、ハーベイがこのカクテルを飲んだが、酔ってカクテルの名前を忘れてしまう。
そこで次の日の朝、カクテルの名前を求めて酒場の壁を叩いて回ったという伝説から有名になったカクテル。

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2007年9月15日 (土)

チェ・ゲバラvsゾンビ軍団vs越中詩朗

1967年。ゲバラは軍事革命のためにボリビアで戦っていた。

ボリビア政府軍は精強で、彼の率いるゲリラ軍は苦戦を強いられていた。

それに加え、ボリビア政府はCIAから極秘裏に支援を受けていたのだ。

その支援の内容とは…。

ある日、政府軍を襲撃した帰りにゲバラは一人仲間とはぐれてしまう。

無線機を壊され、一人きりで追っ手をかわしながら山岳地帯を逃げる。

追いかけるのは、生気の無い目をした、生ける屍達。

これこそCIAがボリビア政府にゲリラ掃討の支援として送り込んだ、ゾンビ軍団だった。

一方、サムライ・シローこと越中詩朗はプロレスの試合が行われるボリビアへと向かっていた。

だが途中でガソリンが無くなり、山道の真ん中で立ち往生することになる。

幸い小さな村が近くにあり、ガソリンを売って貰う越中。

だがその時、村にゾンビ軍団があわられ、片っ端から村人を殺していく。

越中もあっというまにゾンビに補足される。

だが、恐れを知らぬSAMURAIの魂を持つ越中に動揺は無い。

「何だか知らないけど、やってやるって!

ゲバラもゾンビに補足され、戦闘を繰り返しながら逃げる。

途中、小さな村に立ち寄る事になるゲバラ。

だが、そこで見つけたのは村人の死体。

どうやらゾンビは出会った人間は無差別に攻撃するらしい。

このままゾンビを引き連れ、ゲリラの本拠地に帰るわけにもいかない。

覚悟を決め、ゾンビ軍団を完全粉砕することにする。

村で唯一ゾンビに対抗していたのは、元ゲリラ兵士という女、リタだけだった。

ゾンビにやられる寸での所でリタはゲバラに助けられる。

村中に遺棄されていた重火器を使って反撃するゲバラ。

だが、物量に勝り士気も低下しないゾンビ軍団に次第に押されていく。

あやうくやられそうになったゲバラを救ったのは、越中のヒップアタックだった。

偶然の再会を喜び、熱い握手を交わす二人。

実はプロレス好きのカストロ将軍から紹介で二人は以前に知り合っていたのだ。

ゲバラの銃と越中のケツで、ゾンビ軍団は次々に倒されていく。

最後にやって来た身長2mのジャイアントゾンビが暴れまわるが、二人は一歩も引かない。

越中が必殺の2階からのヒップアタックを決めて倒した所に、ゲバラの手榴弾が炸裂。

遂にゾンビ軍団の掃討に成功する。

だが、喜びに浸るゲバラの頭に銃が突きつけられる。リタだ。

彼女こそがこのゾンビを操っていた張本人、CIAに雇われたハイチのブードゥ魔術師なのだ。

だが、彼女は銃を下ろす。戦いの中で、彼女はゲバラに惚れたと言う。

このままゲリラに加わり、一緒に戦いたいというリタを、ゲバラは射殺する。

「自由主義者どもの碌を食んだ奴など信用できん。やれやれ」

「おう、信用できないって!」

やがて騒ぎを聞きつけたゲリラ達がゲバラを迎えに来る。

固い握手で再会を誓い合うゲバラと越中。

ゲバラは再びゲリラ活動に、越中は試合へと、本来の姿に戻っていく。

翌日。

ボリビアの首都、ラパスでの越中の試合が行われている頃。

ゲバラはボリビア政府軍のレンジャー大隊の奇襲を受けて捕らえられ、即日処刑されていた。

最後の瞬間、ゲバラの脳裏に越中の姿が浮かんだかどうかは定かではない。

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2007年9月 8日 (土)

フィートウ

まずは謝ろう。本当に申し訳ない。

何の事かって?台風だよ、台風。

何でお前が台風の事で謝るのか、だって?

いや、色々全国に被害及ぼしてるしさ。

死者だって出てるし、一応謝っとかないと。

…だから何でお前が謝るのかって?

だって、台風が日本に来るのは俺のせいだし。

おいおい、そんな顔するなよ。マジだぜ。

…確かに、海流とか大陸性高気圧とかの影響はあるさ。

でも、台風が日本に来るのは、俺に会いに来てるからなんだ。

いいから聞けよ。

俺の爺さんの話だ。

俺の爺さんは戦争で赤道付近の南太平洋にいたんだ。

海軍で駆逐艦に乗ってたんだそうだ。

でもまあ、アメリカ海軍との激戦でやられてな。

艦は撃沈、爺さんは海に投げ出された。

それから何日も、爺さんは艦の破片に捕まって漂流した。

で、漂流して数日後、爺さんは信じられないものを見たんだ。

海の上に立っている、女の姿を。

それはそれは美しい女で、爺さんはたちまち恋に落ちた。

女のほうもすぐ爺さんに惚れたみたいだ。そう聞いた。

…いや、本当にその女が居たかなんて知らんよ。

爺さんの話さ。

幻覚?まあ、そうかもな。

で、女は爺さんを助けてやると言って来た。

ただし、条件がある。

条件って?自分との子供を作って欲しい、だそうだ。

…解った。でももうちょっと話を聞いてけよ、な?

ま、数十日飲まず食わずだったんだ。

爺さんに選択の余地なんか無いよな。

するとたちまち晴天の空が曇り、スコールが降り出した。

爺さんはそれで喉の渇きを潤した。

さらに、何故か次々と周りに魚が飛び跳ね始めた。

それを食って飢えをしのいだ。

いや、子供を作る話はしてくれなかった。

この話聞いたのは、俺がまだ子供の頃だったからな。

さすがにそんな話は出来なかったんだろうさ。

でも、その女とは海の上で何日か暮らしたそうだ。

漂流してから、日にちの勘定は出来なかったらしいけど。

まあとにかく、数日後。

女が突然別れを告げたそうだ。

爺さんはそのまま海の上で暮らしてもいいくらい女に惚れていた。

でも、ルールらしく、どうしても別れなければいけない。

突然のスコールが収まると女は消えていた。

暫らくして、アメリカ軍の艦船が近くを通りかかった。

爺さんは収容され、そのまま終戦を迎えた。

それからだ。

無事に復員したじいさんの元を、毎年のように訪れてくるんだ。

じいさんとあの女の子供が。

ま、分身、と言ったほうが良いのかもな。

カスリーン、アイオン、ジェーン…。

終戦から暫らくは結構洒落た名前も着いていたっけ。

そう、台風のことさ。

え?台風を生むその女の正体?

爺さんから何も聞いてないよ、そんなの。

でも、赤道付近は「台風が生まれる場所」って言うしなぁ。

それから、台風が来ると決まって爺さんは一人で出かけていく。

そして、台風が去る頃には帰ってくる。

毎回、びしょぬれで満足そうな顔してな。

やがて爺さんは死に、父さんが台風の中を出かけるようになった。

ところがその父さんが、1年前突然交通事故で亡くなった。知ってるだろ?

となると台風が次に目指してくるのは…そう、俺さ。

愛した男の孫の顔を見に、毎年彼女らはやってくるのさ。

…いや、それだけじゃない。

新たな台風の子供を生み出すため、その親を見つけるために。

…ふむ。

ま、信じなくてもいい。単なる与太話さ。

酒の肴くらいにはなっただろう?

うん。

で、俺が先日の台風の中、何処に出かけてたかって?

そりゃお前、秘密さ。

…フィートウちゃん、南国の香りがしたっけ。

可愛かったなぁ…。

*フィートウ
ミクロネシアの花の名前。台風9号のアジア名。

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脳内メイカー

俺はこの世界の主だ。

俺の世界は、この四畳半の部屋。

俺には、この世界だけあればいい。

…。

いや、この世界だけではダメだ。

俺には、命よりも大事なものある。

それが彼女だ。

分からず屋の親や心理ナンタラの先生には見えないが、俺には見える。

彼女は存在するのだ。彼女は俺の理想の女性だ。

身の回りの世話をしてくれる。料理を作ってくれる。

話し相手になってくれる。

想像するだけで好きな格好をさせられる。

そりゃあ…夜には色んな格好で色んな事もするさ。

でも彼女は何をしたって喜んでくれる。

俺がそう望んでいるから。そう妄想したから。

彼女の居るこの世界があれば、俺は生きていける。

そう思っていた。

だが、ある日から彼女の態度がよそよそしくなる。

俺には一切隠し事をしない彼女に、一体何があったのか。

思い切って尋ねると、彼女は言った。

「私は私のすべてをあなたに見せたわ」

「だから今度はあなたが私にすべてを見せて」

何と言うことだ。彼女が反抗した。この世界の主に。

俺は彼女を痛めつけた。死にそうなほど痛めつけても彼女は死なない。

俺がそう望むからだ。

だが、どんなに痛めつけても彼女の反抗的な態度は変わらない。

俺のすべてを見せろといっても、俺のすべては彼女自身じゃないか。

そんなことも解らないのか。俺の妄想から生まれたくせに。


ある日目覚めると、俺の世界から彼女が消えていた。

「あなたには愛想がつきました。出て行きます」とメモを残して。

彼女の消え去った世界。

俺の世界は無限に広がる荒野となった。

あてども無く荒野をさまよう俺。

彼女が居なければ、俺の存在する意味も無い。

彼女は俺のすべてだから。

俺のすべてを失った俺は、どうするべきか。

死だ。

俺はナイフを握り締め、手首を切り裂いた。

だが、俺は死ななかった。

何故だ?

俺の世界の主は、俺なのに、俺の意思で死ねないなんて。

…ああ、解った。

俺も誰かの妄想で作られた存在なんだ。

俺の妄想主が、俺の死ぬ事を望んでいないんだ。彼女と同じように。

畜生、何てことだ。

…おい、聞いてるか、妄想主。俺もお前に愛想が尽きた。

俺もお前の妄想から出て行ってやる!

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